2023 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍関連マクロファージをターゲットとした小細胞肺癌の新規治療戦略
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22K08257
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
入來 豊久 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (20802078)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂上 拓郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (00444159)
菰原 義弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (40449921)
藤原 章雄 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (70452886)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 腫瘍関連マクロファージ / 小細胞肺癌 / 天然物由来化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、標準治療の進歩に乏しい小細胞肺癌(SCLC)の新たな治療法の開発を目的に、マクロファージの活性化を調節する化合物をSCLCの治療に応用しようとする研究である。近年、腫瘍微小環境を形成する腫瘍関連マクロファージの活性化状態が腫瘍進展に関与していることが知られており、腫瘍促進性のオルタナティブ活性化(M2)マクロファージが腫瘍促進に関わっていることら知られている。これまでに、申請者らはSCLCの腫瘍微小環境におけるマクロファージとSCLC細胞両者におけるSTAT3の活性化の抑制がSCLCに対する治療標的となることを報告した。そこで、本研究では主にSTAT3の活性化を抑制することでマクロファージの活性化を制御する化合物を用いて、単剤での効果ならびに既知抗腫瘍療法との併用効果の検証し、マクロファージ活性化制御に基づく新たなSCLCの治療法の開発を目指す。 本年度は、STAT3の活性化を抑制することでマクロファージの活性化を制御する候補化合物であるトリテルペノイド化合物であるUrsolic acidが、マクロファージ由来液性因子によるSCLC細胞のSTAT3活性化と細胞増殖能を抑制することを明らかにした。また、免疫不全マウスを用いたヒトSCLCの皮下腫瘍モデルに対するUrsolic acidの作用を評価したところ、Ursolic acid投与により腫瘍進展の抑制が認めれられた。さらに、本年度は新たな候補化合物としてノブドウ由来のフラボノイド化合物であるGarlic acid類似体およびスルフィド化合物誘導体を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実験計画における大きな目標としては、マクロファージ由来の液性因子によるSCLC細胞におけるSTAT3活性化と細胞増殖能対するトリテルペノイド化合物であるUrsolic acidの作用の評価ならびに、マクロファージとSCLC細胞間の相互作用(直接・間接共培養)によるSCLC細胞のSTAT3活性化と細胞増殖能の増加に対するUrsolic acidの効果の検証であった。本計画の進展度としては、Ursolic acidがマクロファージ由来の液性因子によるSCLC細胞におけるSTAT3活性化を単培養ならびに共培養のどちらの条件においても抑制することでSCLC細胞の増殖を抑制することを明らかにした。また、SCLC細胞(SBC3 cell)を移植したヌードマウスへのUrsolic acidの投与により腫瘍進展(腫瘍重量・腫瘍サイズ)が抑制され、皮下腫瘍における腫瘍の活性化マーカーであるpSTAT3陽性細胞数が減少した。ゆえに、マクロファージの活性化を制御するUrsolic acidはSCLCにおいて腫瘍の進展・増殖に抑制的に機能している可能性が示唆された。Ursolic acidのSCLCに対する抗腫瘍効果については学術論文にて報告予定で執筆準備中である。さらに、本年度は新たな候補化合物としてノブドウ由来のフラボノイド化合物であるGarlic acid類似体を同定し、Garlic acid類似体もマクロファージ由来の液性因子によるSCLC細胞におけるSTAT3活性化を抑制することを明らかにした。ゆえに、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、Garlic acid類似体のマクロファージを介したSCLC細胞STAT3活性化および増殖に対する抑制メカニズムの解明を行う。また、免疫不全マウスを用いたヒトSCLC細胞の皮下腫瘍モデルを用いて、環状スルフィド誘導体ならびに天然化合物 (Garlic acid類似体, Ursolic acid)のin vivoでの抗腫瘍作用の評価および、既存の抗腫瘍療法との併用による抗腫瘍効果の評価を行う。さらに、DLL3やアンフィレグリンの腫瘍関連マクロファージに対する作用の解明を行う。具体的には、細胞実験にてDLL3刺激によるマクロファージにおけるサイトカイン分泌等を評価する。加えて、SCLCの組織標本を用いて、腫瘍内浸潤マクロファージにおけるDLL3受容体であるNotch受容体や、そのシグナル伝達に関与する分子を免疫組織化学的に解析する。つまり、これまでの研究成果、ならびに上記の検証を行うことで、将来的に臨床応用可能なマクロファージの活性化制御に基づく小細胞肺癌に対する新規治療戦略の基礎的知見を得ることを目指す。
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Causes of Carryover |
[次年度使用額が生じた理由] マクロファージ由来の液性因子によるSCLC細胞におけるSTAT3活性化と細胞増殖能対するトリテルペノイド化合物であるUrsolic acidの免疫不全マウスを用いたヒトSCLC細胞の皮下腫瘍モデルにおける既存の抗腫瘍療法との併用効果も検討する予定であったが、スケジュールの都合上次年度に実施することになってしまったため、マウス腫瘍移植モデルでのin vivo実験分が次年度使用額として生じた。
[使用計画] すでに、必要量の候補化合物の準備・調製もできたため、候補化合物のマウス腫瘍移植モデルでのにおける既存の抗腫瘍療法との併用効果を検討する予定である。
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Research Products
(3 results)