2022 Fiscal Year Research-status Report
高解像細胞系譜解析を用いたclub細胞の恒常性維持及び疾患時の可塑性の解明
Project/Area Number |
22K08258
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松尾 顕 熊本大学, 発生医学研究所, 学術研究員 (50735074)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 損傷修復 / 細胞運命転換 / Notchシグナル / Club細胞 / 基底細胞 / 扁平上皮化生 |
Outline of Annual Research Achievements |
損傷修復(再生)のために、分化した細胞は細胞運命を転換する可塑性を保持する。しかし、この可塑性は前癌病変発生(発癌)の原因となるが、その発生機序は不明瞭である。我々は、マウス気管において、Notchシグナル標的遺伝子の不活性化により、Club細胞が基底細胞(induced basal cell、iB細胞)へ脱分化することを見出した。前癌病変である扁平上皮化生は、気道上皮細胞が基底細胞へ運命転換(脱分化)する現象である。そこで、本研究では、Club細胞の運命転換が、再生及び前癌病変(扁平上皮化生)にどのように関与するかを細胞系譜解析と1細胞トランスクリプトーム解析(scRNA-seq)を用いて検証することを目的とした。本研究の知見は、Club細胞(分化した細胞)の可塑性がどのように恒常性及び発癌に寄与するかの理解、前癌病変である扁平上皮化生の発生機構の理解、さらには、細胞運命を制御する技術を用いて、内因性細胞の賦活化による損傷修復を目指した新たな癌治療の基盤形成につながる。令和4年度は、予定していたClub細胞からiB 細胞を誘導する際のClub細胞、iB細胞及び基底細胞の亜集団が同定できた。さらに、1細胞トランスクリプトーム解析による軌道予測(RNA velocity解析)と細胞系譜解析を用いることで、高解像度にClub細胞からiB 細胞が誘導される系譜が推測できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Club細胞からiB 細胞を誘導するScgb1a1-rTA;tetO-Cre;Notch標的遺伝子fl/fl;R26R-tdTomatoマウス(以下運命転換マウス) とScgb1a1-rTA;tetO-Cre;R26R-tdTomatoマウス(以下コントロールマウス)の1細胞トランスクリプトーム解析のデータ解析を用いて、誘導された基底細胞(induced basal cell、iB細胞)の亜集団の同定を行った。その結果、近接する二つのKrt5/Trp63発現基底細胞集団とKrt13/Krt4(扁平上皮細胞マーカー)発現細胞集団を発見できた。細胞動態の推定を行う目的で、RNA velocity解析を行った。その結果、Krt13/Krt4発現細胞集団から基底細胞への軌道が予測された。以上の結果は、1細胞トランスクリプトーム解析により、Club細胞から基底細胞を誘導する際の細胞集団を同定したことを示唆している。Tet-ONシステムとCre/loxPシステム併用細胞系譜解析を用いて、マウス気管内において、細胞系譜標識されたKrt13/Krt4陽性細胞とその周辺に細胞系譜標識された基底細胞を同定した。この結果は、1細胞トランスクリプトーム解析により予測した細胞動態のデータ及び細胞系譜解析のデータを合わせることで、高解像度に細胞系譜を実証したことを示唆している。以上より、本研究計画は、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、扁平上皮化生はClub細胞から誘導されたiB細胞によるものかを実証する。この目的を達成するために、遺伝子改変マウスを用いて、扁平上皮癌発生マウスモデルを試みる。まず、Club細胞からiB細胞を誘導する。その後、遺伝子改変マウスを用いて段階的に、扁平上皮化生、異形成、扁平上皮癌を発症させ、扁平上皮化生がiB細胞を起源細胞とするのかを評価する。
|
Causes of Carryover |
購入予定の遺伝子改変マウスの納入が次年度になるため。
|
Research Products
(1 results)