2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K08261
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
筒井 正人 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70309962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊波 幸紀 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10880734)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 活性硫黄 / 遺伝子治療 / 肺高血圧 / ヒト / 呼吸器疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、システインパースルフィド(CysSSH)をはじめとする活性硫黄分子種が生体内で大量に合成され、強力な抗酸化活性やレドックスシグナル制御機能を発揮していることが明らかにされた(PNAS 2014)。さらに、タンパク質翻訳酵素の一つであるシステインtransfer RNA合成酵素(CARS)が、活性硫黄分子種の合成酵素であることが発見された(Nat Commun 2017)。しかし、CARS遺伝子導入の作用はこれまで全く報告されていない。肺高血圧症は、肺動脈が進行性に狭窄し肺動脈圧が上昇して、右室不全と早期死亡をきたす疾患である。肺高血圧症は根本的な治療法がないために予後が不良で、有効な治療法の開発が喫緊の課題となっている。本研究では、(1)肺移植手術時に摘出された肺高血圧症患者の肺組織から作製したヒト肺動脈平滑筋培養細胞、および(2)進行性の重度の肺高血圧症の病態を示す慢性低酸素暴露一酸化窒素合成酵素(NOSs)完全欠損マウス(triple n/i/eNOSs-/-マウス)を用いて、in vitroおよびin vivo CARS2遺伝子導入の作用を検討し、肺高血圧症に対するCARS2遺伝子治療法の確立を目指す。 研究代表者は、最初に、ヒト肺動脈平滑筋培養細胞を用いて研究を行った。CARS2遺伝子を組み込んだadeno-associated virus (AAV)ベクターと遺伝子を組み込まないempty AAVベクターを作製し、ヒト肺動脈平滑筋培養細胞の細胞増殖に対するCARS2遺伝子導入の作用を検討した。その結果、empty遺伝子導入と比較して、CARS2遺伝子導入は細胞増殖を抑制する予備的結果が得られた。今後は、この点をさらに例数を重ねて検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者は、まず最初に、eGFP遺伝子を組み込んだAAVベクターを作製し、コントロールベクターとして使用した。すると、eGFP遺伝子導入はヒト肺動脈平滑筋培養細胞の細胞増殖に対して予想外の抑制作用を示し、CARS2遺伝子導入の抑制作用との間に差が見られなかった。研究を進める過程で、eGFP遺伝子導入は細胞増殖に対して非特異的な毒性を示すことが徐々に分かってきた。それが分かるのに時間を要し、また、新たにempty AAVベクターを作製するのにも時間を要した。加えて、ヒト肺動脈平滑筋培養細胞の細胞増殖が継代を重ねると止まってしまい、実験を円滑に進めることが出来なかった。このような理由から、研究はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」の項で述べたように、empty遺伝子導入と比較してCARS2遺伝子がヒト肺動脈平滑筋培養細胞の細胞増殖に対して抑制作用を示す結果が得られつつある。今後はこの点をさらに例数を重ねて検討する。それが証明されれば、次に、CARS2遺伝子導入の抑制作用の時間依存性とMOI(Multiplicity of Infection)依存性を検討する。さらに、CARS2遺伝子導入が細胞増殖サイクルのどこを抑制しているのかをフローサイトメトリーで検討する。最後に、RNA sequencing等を行い、CARS2遺伝子導入の細胞増殖抑制作用の分子機序を明らかにする。
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