2023 Fiscal Year Research-status Report
網羅的菌叢解析を用いた慢性下気道感染症の病態の解明
Project/Area Number |
22K08272
|
Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
矢寺 和博 産業医科大学, 医学部, 教授 (40341515)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 慢性下気道感染症 / 非結核性抗酸菌症 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は非結核性抗酸菌症を疑う慢性下気道感染症患者に対して、クローンライブラリー法を用いたSanger法による細菌叢解析を引き続き、行った。対象患者の病変部の気管支肺胞洗浄液を用いて、16S ribosomal RNA遺伝子におけるV3-V5の超可変領域をターゲットとするE341F-E907Rをプライマーとした解析だけでなく、抗酸菌特異的な可変領域をターゲットとするプライマーを用いた解析を行うことで非結核性抗酸菌の検出の精度を上げた。この手法を用いることで、慢性下気道感染症患者の下気道細菌叢、及び抗酸菌感染の有無、複数抗酸菌種の混合感染の有無を調査した。本手法では、複数菌種を同時に評価できる利点に加えて、通常は抗酸菌の菌種同定を行う場合だと菌が培養されるまで数週間かかりその後も同定を行うまでにさらなる時間を要するが、本手法だと検体採取後数日間で菌種の推定を行うことが可能となる利点がある。 上記手法による慢性下気道感染症患者の病変部の気管支肺胞洗浄液の細菌叢解析、及び臨床所見との比較を行った結果、非結核性抗酸菌が検出された群の方が検出されなかった群に比較して、細菌叢における嫌気性菌の占める割合(特にPrevotella属の占める割合)が高値となる事を確認する事ができている。また、非結核性抗酸菌が複数菌種検出される症例が一定数存在する事を確認出来ており、この非結核性抗酸菌が複数菌種検出される症例と単一菌種のみが検出される症例とにおいて画像所見、臨床症状の差異について比較すると、複数抗酸菌種が検出された群において臨床症状の改善が乏しく、画像所見が悪化しやすい傾向にある事を確認出来ている。また、非結核性抗酸菌を複数菌種検出された症例の一部では抗酸菌培養を延長する事で複数菌種の非結核性抗酸菌の菌株を同時に確認出来て いる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規の慢性下気道感染症症例について症例収集、解析を行う事が出来ており、概ね目標登録症例数の症例登録が出来た。 登録患者の観察期間が2年間であり、漏れが無いように引き続き臨床データを登録する。
|
Strategy for Future Research Activity |
概ね、目標症例登録数の症例を収集出来ている。今後は、登録済みの症例の病態増悪時における肺内細菌叢の変化を調査・解析する事を目標に、登録済み症例の治療、経過観察を継続していく。 また、既にクローンライブラリー法を用いたSanger法による細菌叢解析を完了している症例の内、非結核性抗酸菌が検出されなかった症例においても、追加で次世代シークエンサーを用いて病巣部気管支肺胞洗浄液の細菌叢を解析し、非結核性抗酸菌が検出されないかを確認する。
|
Causes of Carryover |
細菌叢解析の検体は充分に集まったが、シークエンス機械の故障等で解析が一時期間出来ず、余剰金が発生した。現在、機器の修理は完了しており、滞っていた解析を再開出来ているため、余剰金は次年度の試薬購入費として使用予定である。
|
Research Products
(2 results)