2022 Fiscal Year Research-status Report
進行性線維化を伴う間質性肺疾患における新規臨床指標の開発と治療標的の探索
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22K08281
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷澤 公伸 京都大学, 医学研究科, 助教 (20639140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 文彦 京都大学, 医学研究科, 教授 (50212220)
伊達 洋至 京都大学, 医学研究科, 教授 (60252962)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 間質性肺疾患 / 特発性肺繊維症 / ゲノム解析 / 画像解析 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1) 進行性線維化を伴う間質性肺疾患progressive fibrosing interstitial lung disease(PF-ILD)の形態変化の解明 、2)PF-ILDの病態解明に基づくバイオマーカーの同定と治療標的の探索である。2022年度の研究実績は次のとおりである。 1. PF-ILDは特発性肺線維症idiopathic pulmonary fibrosis(IPF)以外の間質性肺疾患に見られる、難治性のフェノタイプであるが、その進行様式はIPFをプロトタイプとする。PF-ILDの形態変化の解明には、まずIPFの経時的な形態変化を明らかにする必要がある。そこで、京都大学病院に受診歴のあるIPF120例を対象に、自動解析ソフトを用いたCT画像の解析を行い、①1年間での間質性陰影の3%以上の増加、線維化病変の3%以上の増加が、呼吸機能低下とは独立した予後不良因子である、②5%以上の気腫性変化の合併は%FVC高値、FVC1/FVC低値、%DLCO低値と関連する、③上肺野の5%以上の気腫性変化が%FVCの経時的な低下を緩やかにする一方、下肺野の10%以上の気腫性変化は予後不良因子である、を明らかにした。 2. サルコイドーシスはPF-ILDをきたしうる慢性間質性肺疾患だが、1年間の%FVC低下5%以上、%DLCO低下10%以上は、生命予後と関連しないことを示した。 3. 家族性肺線維症は、病型によらず、PF-ILDを生じうる。京都大学病院において、家族性肺線維症10例を前向き に登録し、臨床情報、画像、病理所見、遺伝子解析を含むオミックス解析用の血液検体を集積した。すでに多施設共同前向きコホート研究のプラットフォームは構築されており、現在、PF-ILD症例の臨床情報、画像、血液検体の集積を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. IPF患者を対象とした画像解析研究、サルコイドーシス患者を対象とした臨床研究は概ね順調に進んでいる。 2. 前向きの多施設共同研究はやや遅れている。すでに多施設共同前向きコホート研究のプラットフォームは構築されており、京都大学では家族性肺線維症の症例集積を始めているが、オミクロン株による第7波を含む新型コロナウイルス感染症流行の遷延により、他施設での新規症例の登録に制約を生じたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 京都大学で脳死肺移植登録されたPF-ILD症例を対象に画像解析研究を行い、とくに肺移植を施行された症例では、登録時と移植時での経時的な画像変化、病理所見との比較照合を行う。血液検体が保存されている症例では、オミックス解析を行い、画像所見との関連 2. 新型コロナウイルス感染症の流行状況を考慮しながら、多施設での線維性間質性肺疾患症例の新規登録を行う。100例を目標に臨床情報(病歴、呼吸機能など)、画像、病理所見、遺伝子解析を含むオミックス解析用の血液検体を集積する。ここで集積されたDNA検体を用いて、全ゲノムシークエンスWhole Genome Sequencing(WGS) を行い、画像的な特徴や疾患の進行に関与する遺伝的な背景を同定する。コントロールとして、京都大学医学部附属ゲノム医学センターが主宰するながはまコホートのゲノム情報を用いる。 3. 新型コロナウイルス感染症の流行状況により、多施設共同研究、とくに血液検体やDNA検体の集積が困難であれば、①臨床情報、画像の集積、②当科に保存された既存の血液検体を用いた遺伝子解析、バイオマーカーの評価や血清蛋白質の網羅的な測定、解析を優先的に行う。
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Causes of Carryover |
2022年度に予定していた多施設でのオミックス検体の集積、DNA抽出などがが、新型コロナウイルス感染症の流行により遂行できなかったため。新型コロナウイルス感染症の流行状況を考慮しながら、2023年度に施行する予定である。
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