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2022 Fiscal Year Research-status Report

肺線維化機構の解明と治療標的分子の同定

Research Project

Project/Area Number 22K08282
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

豊本 雅靖  京都大学, 医学研究科, 特定助教 (20600505)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywords呼吸器疾患 / 肺線維症 / 創薬科学 / ケミカルバイオロジー / 線維化
Outline of Annual Research Achievements

研究背景: 特発性肺線維症の生存期間の中央値は診断から2~3年で、膵がん、肺がん、白血病といった悪性腫瘍と同等に予後不良な疾患であるため、治療法確立は喫緊の課題である。
研究目的: 本研究の目的は、肺線維症に有効な治療法の確立を目指して、上皮細胞障害時に増加する活性型TGF-β関連分子を同定し、線維症の線維化機構の分子モデルを構築して、治療標的候補分子群を特定することである。
研究実施計画: 令和4年度研究計画では、上皮障害で増加する活性化TGF-β関連分子群の同定を掲げている。これまでの予備検討で、薬剤性肺障害の誘発物質アミオダロンを加えてヒト由来上皮細胞を培養した場合に、活性型TGF-βなどの分子が培養上清中に増加することを見出しており、その関連分子群同定を目指した。
成果の具体的内容: 線維化機構の分子モデル構築に関して、活性型TGF-β関連分子群の発現・分泌等に関係する分子機構を解明するために、分子機構仮説の全体像を分子生物学的に説明し得る仮説に落とし込む方針で進めた。肺上皮細胞A549をアミオダロンを加えて培養、mRNAを経日的に抽出し、次世代シーケンシング後に網羅的トランスクリプトーム解析を行って変動する分子を同定した。特に潜在型TGF-βを活性化させる機能が報告されているインテグリン分子群について、アミオダロン処理で特異的に発現上昇した分子を同定し、発現上昇をアウトプットとして、インプットのアミオダロンからつながる分子機構を仮説として構築した。
意義: 肺線維症に有効な治療法の確立を目指すうえで、線維化機構の分子モデル化は、治療すなわち創薬と、予防すなわちリスクファクターの回避を分子機構から考えるために必須である。
重要性: 線維化機序の分子モデル化は、ウイルス感染後に観察される肺線維化や指定難病である特発性肺線維症の治療法進展につながると期待できる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究では、令和4年~6年度までに、上皮障害で増加する活性化TGF-β関連分子群を同定・解析し、線維化亢進機構を分子生物学的に説明し、さらに、肺線維症モデルマウスで同定分子が線維化亢進に関与するのか明らかにすることを目指している。
令和4年度研究計画では上皮障害で増加する活性化TGF-βを含む複合体を構成する分子群を同定することを予定していた。ヒト上皮細胞A549にアミオダロンを加えて培養し、上皮障害による活性化TGF-β等の増加を測定するなど、検討を繰り返す中で、培養時に用いるウシ胎児血清(FBS)のロット差が、活性化TGF-βの増加に大きく影響することが示唆された。FBS成分のうち、ロットによる成分構成が大きく変動するものにはホルモン分子が考えられることから、ホルモンが除去されている活性炭処理されたFBSを用いて、任意のホルモン濃度での培養を行ったところ、ホルモンが上皮障害に影響することが示唆された。したがって、令和4年度の計画よりも、令和5年度研究計画に掲げていた活性型TGF-β関連分子群の発現・分泌に関係する分子機構の解明を先行させ、アミオダロンによる上皮細胞障害時のトランスクリプトームデータを解析し、変動遺伝子群を抽出することにした。変動遺伝子群のうち、TGF-β活性化と関係の深い分子群を抽出し、その中でも特定のインテグリン分子の発現上昇に注目して、上昇につながる分子機構を仮説構築した。

Strategy for Future Research Activity

令和5年度研究計画に掲げていた、令和4年度に同定した活性型TGF-β関連分子群の発現・分泌に関係する分子機構の解明を令和4年度に引き続き推進する。令和4年度の研究計画に掲げていた、上皮障害で増加する活性化TGF-βを含む複合体を構成する分子群の同定については、仮説構築した分子機構の検証を進め、ウシ胎児血清に含まれる変動要因を含めて、線維化機構の分子モデル構築が見えた段階で進めることとする。
本研究は、肺線維症に有効な治療法の確立を目指している。近年の肺線維症に関する報告で、線維化にプログラム細胞死フェロトーシスのメカニズムが影響することや、フェロトーシスの阻害がブレオマイシン誘発肺線維症モデルマウスの肺線維化抑制につながることが主張されている。フェロトーシスは、生体内の過酸化抑制物質の機能不全や過剰な遊離鉄に依存する過酸化脂質の増加によって、細胞膜が機能障害を生じ、細胞死が誘発される現象である。肺線維症モデルマウスだけでなく、ヒト肺線維症患者肺にも鉄の蓄積が見られ、フェロトーシスの線維化への関与が示唆されている。
我々は新規フェロトーシス阻害剤を同定しており、それがマウスへの経口投与で血中移行することを確認した。その血中濃度は、一過性ではあるが、in vitroでフェロトーシスが阻害できる濃度を十分に超えていた。したがって、今後は新規フェロトーシス阻害剤による肺線維症治療を目指した検証も行う。治療標的候補分子の一つとして過剰な過酸化脂質を掲げ、線維化機構の分子モデル構築と並行して、肺線維症に有効な治療法の確立を目指して今後の研究を推進する。

Causes of Carryover

およそ28万円程度の次年度使用額が生じた。
理由は、当初予期しない現象が示唆されたことで、令和5年度研究計画に掲げた内容を部分的に推進し、使用計画の変更が生じたためである。令和5年の研究計画をより推進するため、物品費としての使用を計画している。

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Published: 2023-12-25  

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