2023 Fiscal Year Research-status Report
新たな腎保護薬の開発を目標とした、ウロモジュリンの機能解析
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22K08327
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小野江 為人 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (80603498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 清亮 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任准教授 (10467110)
川野 充弘 金沢大学, 附属病院, 特任教授 (20361983)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ウロモジュリン / UMOD / Tamm-Horsfall蛋白 / ADTKD / ADTKD-UMOD / 腎間質障害 / 慢性腎臓病 / 遺伝性腎疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウロモジュリン(UMOD)は健常人尿中に最も豊富に存在する腎特異的蛋白である。従来、UMODは尿路感染や尿路結石を抑制する役割のみ知られていたが、ここ数十年の研究で、UMODは、免疫細胞に影響することや急性腎障害時の腎保護作用など、その機能に関する知見は大きく広がった。UMOD遺伝子変異により起こる常染色体優性尿細管間質性腎疾患(ADTKD-UMOD)は、若年より発症する進行性尿細管間質性腎障害をもたらすため、発病者は中年期に末期腎不全に陥る。 ADTKDは、稀な疾患であり、その発祥頻度などは明らかになっていない。ADTKDの原因遺伝子はUMOD以外にMUC-1、TGF-β、Renin遺伝子の変異によって起こることが報告されている。 我々は、過去の腎生検を受けた症例群をベースにADTKDの病態、頻度を明らかにするための解析を行い、3954例の腎生検サンプルの中で、原因不明の慢性腎臓病、50歳以下、高尿酸血症、検尿異常がみられなかった15例に対しUMOD免疫染色を行う事で、3例のADTKD-UMODを見出した。さらに解析を進め、ADTKD-MUC1発病者腎に蓄積するfsMUC1蛋白に対する抗体を用いた免疫染色を行い、1例において変異MUC1蛋白の蓄積増を見出した。MUC1遺伝子は繰り返し構造を持つため、遺伝子解析は非常に困難であり、今後は他施設と共同して解析を行う予定となっている。 UMODの近位尿細管への影響を解析するため、UMODを産生しない腎近位尿細管由来培養細胞(HK-2細胞)に対してUMODを投与する実験を進める予定であったが、世界のUMOD研究の流れの変化に対応して、我々の研究室においても、UMODの全身への影響を解析する方向へ研究の方向性をシフトする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ADTKD-UMODの病態、遺伝子背景、腎病理の特徴を明らかにするための研究に、全国の多施設から症例が集まっており、解析症例数は徐々に増えている。 UMODノックアウトマウス作成は、実験、作成の計画に時間がかかってしまったが、現在、金沢大学疾患モデル総合研究センターと共同して作成を進めている。UMODノックアウトマウスは過去に相同組み換えで2系統作成されているが、世界で初めてCRISPR/Cas9システムでの作成を進行させている。
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Strategy for Future Research Activity |
近年のUMODノックアウトマウスを使用した研究によって、敗血症誘発時にUMODが生体保護的に働くことが報告された。(LaFavers KA et al. The kidney protects against sepsis by producing systemic uromodulin. Am J Physiol Renal 2022) また動脈硬化誘発時、UMODは血管石灰化を抑制させることが報告された。(Alesutan I et al. Circulating uromodulin inhibits vascular calcification by interfering with pro-inflammatory cytokine signalling. Cardiovasc Res. 2021) 我々は、尿路結石や尿路ガンなどにより排尿障害が起こった祭に、UMODが腎および生体保護的に作用するかどうかを明らかにするために、UMODノックアウトマウスと野生型マウスにおいて、両側尿管結紮を行い、生存率や腎機能、UMODの動態を評価する予定としている。
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Causes of Carryover |
UMODノックアウトマウス完成が約4か月後となる予定であり、尿管結紮による尿閉モデルを作成し、病型評価を完成する期間が、次年度までかかる見込みとなっている。
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