2022 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病患者における生体内細菌叢をターゲットにした新規抗老化療法の開発
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22K08328
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 佐和子 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (80625757)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 彰一 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10362253)
今泉 貴広 名古屋大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40867769)
小杉 智規 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90584681)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / 細胞老化 / 長時間透析 / 慢性炎症 / Microbiome / allostatic load / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
最も深刻な尿毒症下にある従来透析療法施行中(NICE-GENEコホート研究)の患者、長時間透析により尿毒症を可及的に管理している患者(RRTRコホート研究)、保存期腎不全患者(N-KDRG)のサンプルの取集を予定通り遂行している。登録状況は順調である。NICE-GENEコホート研究では現在までに約300名の登録、RRTRコホート研究では約200名の登録(全体で約300名登録のうち長時間透析200名)、N-KDRGでは約100名の登録が達成されている。環境因子(allostatic load)の情報収集については、患者背景・臨床情報(腎機能、炎症、栄養状態、心不全、および動脈硬化指標等)に加えて、老化の表現系であるフレイルの評価項目に基づき、体組成分析・身体機能・身体活動量・精神状態に関するデータ収集を開始した。今後、社会因子としての経済指標や医療リテラシーに関する指標、介護度なども収集可能か検討している。 循環白血球に取り込まれた細菌由来のDNA断片の解析については、NICE-GENEコホート研究における腸内細菌叢の変調の予備解析から、尿毒症などから惹起される酸性環境により炎症性の負担が増加することが一因で起こる腸内細菌叢の変調ではないかと推察した。 さらに、過去の報告と比較検討しこの腸内細菌叢の変調に推測される状況について、我々のコホートでの事例と合致するか検討を進める方針である。 また、コントロールの検体収集として、おそらく約100名程度のサンプルが収集できる見込みである。 国際共同研究施設であるカロリンスカ研究所、グラスゴー大学とは、COVID19パンデミック下、著しく交流が疎になっていたが、今後、国際学会などの機会を通じて情報交換を行い、循環白血球内のMicrobiomeの変調についてさらなる詳細な解析を行えるよう検討を継続していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
すでに開始してるコホート研究の患者登録については順調であるものの、循環白血球に取り込まれた細菌由来のDNA断片の解析については、すでに我々が予備解析に使用した健常人サンプルが、腎臓病患者サンプルと年齢構成があまりに異なり、検体数も少数であったため、比較検討がむずかしいことがわかった。そのため、新たに同年代の日本健常人の対照者によるサンプルの収集を開始している。 腸内細菌叢の変調と細胞老年マーカーについて、テロメア長との検討を予定していた。しかしながら、共同研究者グラスゴー大学のProf. Paul Shielsより、我々が今まで行ってきたテロメア測定法によるテロメア長の解析よりCDKN2Aの評価のほうが、細胞老化を検討するにはSensitiveではないかとの指摘をいただき、予算やサンプルのクオリティも含めて実施可能か検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
NICE-GENEコホート研究、RRTRコホート研究、N-KDRG研究いずれも、患者登録、サンプル収集、臨床情報収集を継続する。慢性腎臓病の初期の患者、さらに慢性腎臓病をきたしうる危険因子を持つ患者についても検討できると、慢性腎臓病の発症、進展、末期腎不全となってからの合併症にいたるまで、患者生涯をカバーするserialな経過を追うことができる。これが可能であれば、慢性腎臓病患者の老化を解明する当研究において研究目的を解明するために有用であると考えられる。 また、循環白血球に取り込まれた細菌由来のDNA断片の解析については、細菌叢の変調は予想より多彩であった。細菌叢の変調の解釈についてすでに確立されたものが少なく、患者の表現系にどのように影響しているかについて報告するのに注意が必要であり、過去報告や共同研究機関でのデータとも比較し検討を続けていく。 海外の研究者の興味は、日本人の慢性腎臓病患者の生存を含めた治療成績が欧米に比し良好であることが、日本食に起因しているのではないかというClinical Questionに基づいており、可能であれば食事に関する(とくに日本独特の発酵食品や魚介類の摂取)について追加情報を取得できないか検討していく方針である。
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