2022 Fiscal Year Research-status Report
Pathologic analysis of tertiary lymphoid tissue in acute interstitial nephritis associated with immune-checkpoint inhibitor
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22K08350
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松原 雄 京都大学, 医学研究科, 講師 (90422964)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 免疫チェックポイント阻害薬 / 急性尿細管間質性腎炎 / 三次リンパ組織 / 糸球体腎炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で注目しているのは、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連有害事象(irAE)の一つとして重要とされている腎障害である。ICIによる腎障害の典型的な病理像は急性尿細管間質性腎炎(ICI-AIN)であり、尿細管間質への炎症細胞浸潤が特徴であるが、近年は、ICI-AINの病理組織内に、浸潤した炎症細胞によって形成された三次リンパ組織(TLT)が見られることが報告されるようになった。しかし、その臨床的意義は明らかではない。よって、本研究の目的がは、ICI-AINにおける尿細管間質への炎症細胞浸潤の程度やTLTの形成が、腎予後や抗腫瘍効果などの臨床的アウトカムと関連するかどうかを検討することにある。この目的のため、令和4年度は、①日本腎臓内科学会の腎生検レジストリー(J-RBR)のデータベースを用いた研究と、②オンコネフロロジーフォーラムにおける腎生検レジストリーから、該当症例抽出する作業を行った。その結果、①から約45例のICI関連AINに関する臨床データセットの補完が完了し、現在解析中である。また、②では、5例のICI-AINを含む、合計11例 の組織を入手できたので、5例のAINの病理学的検討をおこない、これらの解析結果を日本腎臓学会で報告した。さらに、②で、特徴的であったのは、ICIによる典型的腎障害であるAIN以外に、ICIによる糸球体腎炎の組織を登録できたことである。このICIによる糸球体腎炎の解析は、当初なかった新たな研究計画ではあるが、解析手法はICI-AINのそれと変わりがなく、ICI-AINの研究に対する重要な知見となりえる上に、使用する消耗品や研究者のエフォートにも変化は生じないと判断されたので、これらの糸球体腎炎の中で、最多症例であった4例の膜性腎症の解析と免疫組織化学的な検討を加え解析を進めており、初年度はその結果を関連学会に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究における当初の計画は、日本腎臓学会とオンコネフロロジーフォーラムの2つの腎生検レジストリー(J-RBRおよびR1498)の臨床資料および腎生検組織を用いて、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に関連した急性尿細管間質性腎炎(ICI-AIN)と診断された患者を対象に、三次リンパ組織(TLT)の形成を確認するとともに、これらの成熟に関連する因子を同定することであった。しかし、1) J-RBRの腎病理組織の入手の手続きに時間を要していること、2) R1498に登録された腎病理組織は、当初の計画であったICI-AINだけでなく、糸球体腎炎(ICI-GN)が多く入手できたという事態が生じた。したがって、1)に関しては、臨床データを用いた解析は着実にすすんでいるが、病理学的な解析に着手できていない点で遅れていると判断した。また、2)は、本研究テーマである「ICIに関連した腎障害」の病態解明にとって重要かつ新たな知見であるので、当初の研究計画を変更して、下記 【今後の研究の推進方策】に従い遂行の方針とした。
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Strategy for Future Research Activity |
① 令和5年度の研究計画 J-RBRのレジストリを用いたICI-AINの解析では、病理組織入手の手続きを進行させるとともに、現在ある臨床データを用いて解析を遂行する。すなわち、TLT(三次リンパ組織)と関連が深い「尿細管障害」をアウトカムとして、当初の研究計画をすすめる。具体的には、臨床データにある「尿細管障害の範囲(~10%、11~25%、26~50%、51%~)」に関連する要因を探索的に検討するとともに、この臨床データが腎予後やがんの治療反応性にどのような影響を及ぼすか検討する。これは病理組織入手後の解析(すなわち従来の研究計画に記載の解析)の重要な礎になると期待される。R1498研究のレジストリを用いたICI-AINの解析では、当初の計画通り、TLT形成をアウトカムとした解析を遂行するとともに、新たに同定された11例 のICI-GNの症例に対して、膜性腎症4例の解析を行なう。これは当初の計画になかった新たな研究の追加であるが、解析手法はICI-AINのそれと変わりがないので、使用する消耗品やエフォートなどにも変化は生じず、令和4年度に未使用の研究費を用いての研究遂行が可能である。 ② 令和6年度以降の研究計画 令和5年度から継続のJ-RBR病理組織の入手手続きをすすめ、入手次第、当初の研究計画を進めていく。この際、令和5年度の臨床データの解析結果が大いに参考になる。すなわち、TLT形成・成熟に関連する患者因子を同定するとともに、臨床データの解析結果と比較することを計画に加える。また、R1498を用いた研究も当初の研究計画通り、腎におけるTLT形成やその成熟が、ICI-AINの予後やがんの治療反応性にどのような影響を及ぼすかを検討する。R1498の腎病理組織を用いたTLT研究も当初の計画どおり遂行するとともに、ICIによる糸球体腎炎の解析も継続する。
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Causes of Carryover |
当初の計画は、2つの腎生検レジストリー(J-RBRおよびR1498研究)の臨床資料および腎生検試料を用いて、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に関連した急性尿細管間質性腎炎(ICI-AIN)と診断された患者を対象に、三次リンパ組織(TLT)の形成を確認するとともに、これらの成熟に関連する患者因子を同定し、TLTが臨床アウトカムに及ぼす影響を検討する計画であった。しかし、1) R1498研究からの病理組織は入手できたが、J-RBRの腎病理組織の入手の手続きに時間を要していることから、病理組織解析を行うための費用が次年度以降に必要となる見込みとなった。その代わり、2) R1498研究に登録された腎病理組織において、当初の計画であったICI-AINだけでなく、糸球体腎炎(ICI-GN)が多く登録できたという事態が生じた。これは、本研究テーマにとって重要かつ新たな知見であるので、当初の研究計画に追加する方針とした。新たな研究の追加であるが、解析手法はICI-AINのそれと変わりがなく、使用する消耗品やエフォートなどにも変化は生じない。よって、翌年度は、当該助成金をもちいて、①当初の研究計画(ICI-AINの病理解析)と、②新たな研究計画(ICI-GNの病理解析)を遂行する計画である。
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[Journal Article] Effect of Severe Renal Dysfunction on the Plasma Levels of DNA-Reactive Platinum after Oxaliplatin Administration2023
Author(s)
Shunsaku Nakagawa, Aimi Shimazaki, Taro Funakoshi, Atsushi Yonezawa, Shigeki Kataoka, Takahiro Horimatsu, Daiki Hira, Kotaro Itohara, Satoshi Imai, Takayuki Nakagawa, Takeshi Matsubara, Motoko Yanagita, Manabu Muto, Kazuo Matsubara, Tomohiro Terada
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Journal Title
Biol Pharm Bull
Volume: 46
Pages: 194-200
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Decision making for anti-VEGF inhibitor continuation: dip stick? or urine protein/creatinine ratio? (VERSiON UP study)2022
Author(s)
Michio Nakamura, Taro Funakoshi, Shigeki Kataoka, Takahiro Horimatsu, Yoshitaka Nishikawa, Takeshi Matsubara, Takuro Mizukami, Tomoyuki Goto, Kenji Tsuchihashi, Eishi Baba, Takehiko Tsumura, Yoshiaki Mihara, Tetsuya Hamaguchi, Motoko Yanagita, Manabu Muto
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Journal Title
BMC Cancer
Volume: なし
Pages: 1-10
DOI
Peer Reviewed
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