2023 Fiscal Year Research-status Report
The physiological role of neuropeptide Y in disease progression of vitiligo
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22K08377
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大沢 匡毅 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10344029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢澤 重信 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (30392153) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 尋常性白斑 / 疾患モデル動物 / トランスジェニックマウス / 色素細胞 / メラノサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
尋常性白斑はメラノサイトが消失してしまうことにより皮膚に白斑が形成される疾患であり、外見上の病変によって患者のQOLが著しく低下してしまうことが問題である。尋常性白斑は複合的な素因が関与して発症する自己免疫疾患であり、その病態の理解にはin vivoレベルでの解析が必須である。我々は、マウスの皮膚を構成する細胞のトランスクリプトーム解析を行い、ニューロペプチドY (Npy) 遺伝子がメラノサイト特異的に強発現していることを見出した。メラノサイトに対するNPYの生理役割は不明であるが、尋常性白斑症患者を対象としたGWAS解析から、NPY遺伝子座プロモーター部位に存在する一塩基多型(SNP)が尋常性白斑発症と強い相関性があることが報告されている。また、さまざまな自己免疫疾患モデルマウスを用いた研究によって、NPYが自己免疫疾患の発症や病態に関与していることが示唆されている。これらの既知の情報を踏まえ、我々は、NPYが尋常性白斑の発症や病態に何らかの役割を果たしていると仮説を立て、仮説検証研究を開始した。まず、メラノサイトにおけるNpyの発現パターンを解析するために緑色蛍光タンパク質 (mClover3) 遺伝子をNpy遺伝子座にノックインしたマウスを作製した。本マウスの発生過程を解析したこところ、Npy遺伝子が胎児期のメラノブラストから成体毛包中の分化したメラノサイトまでメラノサイト系譜に広範に強発現していることが確認された。また、本マウスのホモ接合体がNpy遺伝子ノックアウトになることを利用し、Npy遺伝子の欠損が尋常性白斑症の発症や病態に及ぼす影響を調べたところ、著明な差異が認められなかった。今後は、尋常性白斑症モデルマウスを用いてNpyのGain-of-functionの効果についても検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Npyの遺伝子座 にmClover3遺伝子をノックインすることによって、Npy遺伝子を破壊した上で内在性のNpyの発現をmClover3レポーターでモニターすることが できるマウスを作製した。作製したマウスを用いて胎児期および成体のマウス皮膚におけるmClover3レポーター分子の発現を調べたところ、胎生期のメラノブラストおよび成体マウスの毛包毛球部に存在する分化したにmClover3の強い発現が認められた。 興味深いことに、本マウスから得られたメラノサイトを培養した場合には、mClover3の発現が認められず、メラノサイトにおけるNypの発現はin vivoの環境に依存していることがわかった。近年、マウスに抗CD4抗体を投与することによって制御性T細胞を除去した後にメラノサイトに対する自己免疫性反応を惹起することによって、容易に尋常性白斑様の病態を発症するマウスを作製できることが報告されている。ホモ接合体のNpy-mClover3ノックインマウスに対し、この方法を用いて尋常性白斑症様の病態を誘導したところ、病態発症に要する時間や病態の深刻度は、野生型マウスと比して有意な差が認められなかった。この結果より、Nypは尋常性白斑症様の病態発症には必須ではないことが示唆された。NPYは抗原提示細胞によって引き起こされる免疫反応を抑制するように作用することが報告されており、今後は、尋常性白斑症様の病態に対するNpyのGain-of-functionの効果についても検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Npy-mClover3レポーターマウスを使用して、メラノサイトにおけるNpyの発現パターンの変化の解析を行う。樹状細胞や単球・マクロファージは様々な刺激に応答してNPYを発現することが示されている。しかし、メラノサイトが産生するNPYの発現がどのように制御されているのかは不明である。今後は、メラノサイトに対し、紫外線や化学物質によって遺伝子障害ストレスや酸化ストレス、小胞体ストレスを与えた時 に、Npyの発現がどのように変化するのかを調べる。また、Npyペプチドは、通常は細胞内に顆粒状に存在し、何らかの刺激に応じて細胞外に分泌されることがわかっている。メラノサイトについても、どのような仕組みによって細胞外へNpyペプチドが放出されるのかを明らかにする。また、現行の方法では、B16メラノーマ細胞の移植によってメラノサイトに対する免疫反応を感作しているが、紫外線照射や化学物質によってメラノサイトにストレスを与え自己免疫反応を惹起する方法も検討する。同時に、メラノサイト特異的にNpyを強制発現させることが出来るトランスジェニックマウスを作製し、尋常性白斑症様の病態に対する影響を解析する。尋常性白斑症様病態に対するNPYの作用が確認されれば、既存のNPYアゴニスト/アンタゴニストが尋常性白斑の病態進展にどのような作用を持つのかを解析する。得られた成果をもとに、既存のNPYアゴニスト/アンタゴニストについて尋常性白斑治療薬へのドラッグリポジショニングの可能性を探索する。
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Causes of Carryover |
交付金は概ね計画通りに使用している。次年度使用額が生じた理由は、端数として余った予算を無理に使用しなかったためである。
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Research Products
(2 results)