2022 Fiscal Year Research-status Report
霊長類や齧歯類と比べて、ヒトの皮膚の創傷治癒が著しく遅延する進化的必然性の探求
Project/Area Number |
22K08387
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
高橋 健造 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80291425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内海 大介 琉球大学, 医学部, 特命助教 (40551958)
大嶺 卓也 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50880738)
山口 さやか 琉球大学, 病院, 講師 (70571397)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / 霊長類 / 表皮付属器 / 創収縮 / 再上皮化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、ヒトと霊長類の治癒速度の観察を基にし、ヒトの創傷治癒の特異性(遅さ)の謎を探求する研究提案である。ヒトの外傷や熱傷、医療上の切除痕等の皮膚の創傷は、縫合、縫縮、植皮などにより丁寧に治癒させる。一方、勿論、ヒト以外の動物はそのような施術を受けることはないが、野生状態にせよ、保護下の実験動物にせよ、ヒトの数倍の治癒スピードと広範な治癒範囲で速やかに治癒に至る。 齧歯類のみならず大型動物を含めた創傷治癒機序のヒトとの違いを、組織トランスクリプトーム解析で発現蛋白の相違や進化上のヒトのみの遺伝子変異を抽出し、シングルセル発現解析で治癒機転に関わる担当細胞の種間の違いを決定したい。創傷治癒の劣ったヒトが、何故、他の類人猿を凌駕して世界中に拡大しえたのか、皮膚以外の臓器の治癒機転もヒトは他の哺乳類とは異なるのか、創傷治癒の能力を喪失した代償にヒトが獲得した、進化上の資質や能力は存在するのか、これら進化上の大きな命題にチャレンジすべき、皮膚科学の領域を越えた研究課題である。 マウス、ラットにおける創傷治癒過程の組織RNAの経時的採取をおこなっている。具体的には、各動物の背部に2-3cm大の皮膚欠損創を作成し、治癒速度が安定した傷後2-3日を中心に各6検体の採取を行い平均化する。ヒトと実験動物としての霊長類や齧歯類等の皮膚創傷過程における、遺伝子発現の相違(組織トランスクリプトーム解析)を、まず組織よりRNAを抽出し解析に供している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験動物とヒトにおける多数検体での実際の創傷治癒スピードの詳細な統計解析がすすみ、当所の想定以上に細かな違いが観察された。当所の計画通り、実験動物における創部のRNA抽出を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
実験動物での創傷皮膚のRNAよりトランスクリプトーム解析を進めるとともに、ヒトの創部の残余皮膚の採取の機会を待つ。
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Causes of Carryover |
今年度の解析用の予算が若干(3万円ほど)、計算上残ったが、既に新年度の解析に供しており、今後も計画通りにRNA抽出とトランスクリプトームデータの解析を継続する。
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Research Products
(21 results)