2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K08426
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
長谷川 稔 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (50283130)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 全身性強皮症 / 線維化 / 皮膚 / 内皮間葉移行 / 血管障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
全身性強皮症の臨床的な病態の特徴は、毛細血管などの血管の減少を伴う血管障害と線維化である。この病態を説明することが可能な考え方のひとつに、内皮間葉移行の亢進があげられている。しかしながら、内皮間葉移行の実験系は、細胞が途中でへたりやすく、十分に確立されていない。 我々はこれまでに、上皮間葉移行を阻害する薬剤をスクリーニングし、既存の化合物や市販薬の中から、LG283やエパルレスタットを候補薬として見出してきた。培養HUVEC細胞(ヒト臍帯静脈内細胞)にTGF-betaとTNF-αを添加すると、細胞がややへたってしまう点が問題ではあるが、内皮細胞がやや間葉系細胞に似た形態に変化することを確認した。また、CD31などの内皮細胞マーカーの発現が低下し、alpha-SMAやSNAIL1/2などの間葉系細胞マーカーの発現が亢進していた。 この実験系に、上記のLG283やエパルレスタットを添加すると、この変化が抑制された。このことから、上皮間葉系移行を阻害する薬剤は、内皮間葉系移行をも阻害する可能性がある。実際に、ブレオマイシンを連日皮内注射して皮膚硬化を誘導したマウスの皮膚では、透明化した皮膚組織の観察で血管の減少が皮膚の線維化に先駆けて、あるいは並行して生じていることが確認された。しかし、LG283やエパルレスタットを内服させたところ、皮膚病変部の線維化は有意に軽減し、血管減少も有意に抑制された。このことから、上皮間葉移行と内皮間葉移行には共通した部分が多いと考えられた。また、強皮症では内皮間葉移行が亢進しているために、血管減少と線維化が同時に進行するものと考えられ、この過程を抑制する薬剤が治療薬として期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
内皮間葉移行の細胞実験系において、血管内皮細胞にサイトカインを添加して間葉移行を促した際に、細胞の活きが悪くなってしまう点が十分に改善できていない。このため、内皮間葉移行を抑制する薬剤のスクリーニングが進んでいない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
内皮間葉移行の細胞実験系は、様々な薬剤の効果をスクリーニングするには、まだ十分安定したものではない。このため、その改善策として、培養液、添加サイトカイン、培養時間、使用する細胞などの条件を変更するなどし、目標達成に向けて更なる検討を進めていく予定である。
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