2022 Fiscal Year Research-status Report
抗真菌薬耐性皮膚糸状菌症の分子生物学的手法によるサーベイランスと治療法の確立
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22K08442
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
加納 塁 帝京大学, 付置研究所, 教授 (00318388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 有太子 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (00459091)
原田 和俊 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (20324197)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 薬剤耐性皮膚糸状菌 / テルビナフィン / イトラコナゾール / デフィニティブセラピー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従って2022年には、研究分担者、研究協力者が診察した白癬患者288症例から白癬菌288株を分離した。分離株について、白癬の治療薬であるテルビナフィン(TRBF)またはイトラコナゾール(ITCZ)耐性株を、それぞれ両薬剤添加培地上での培養によってスクリーニングを行い、耐性候補株を選択した。選択した株については、CLSI M38に準拠して、薬剤感受性試験を実施した。その結果、TRBF耐性4株(Trichophyton rubrum 3株、T. interdigitale 1株)を認めた。これら4株はITCZを含めたアゾール系抗真菌薬には感受性を示した。また4株全てにTRBF耐性に認められるスクワレンエポキシダーゼ遺伝子変異を検出した。一方、ITCZ耐性T. rubrum3株を分離したが、他のアゾール系抗真菌薬およびTRBFには感受性を示した。 以上の結果から、国内の白癬患者の約1.4%はTRBF耐性株に、約1.04%がITCZ耐性株に罹患していることが判明した。研究代表者による2020年の調査では、白癬患者の2.3%でTRBF耐性株に罹患していたので、耐性株罹患率の増加は認められなかった。しかしながら、必ずTRBF耐性株が分離されるため、国内で耐性株の定着が確実であることが認識された。 ITCZ耐性株の罹患状況については、今回の調査が国内初めてであり、ITCZ耐性株の増加に注意が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従って2022年度は、国内の白癬患者200症例から200株以上分離し、薬剤耐性株のスクリーニングおよび同定を行った。得られた結果は、短報として一般社団法人日本皮膚科学会学術雑誌Journal of Dermatologyのオンライン上で既に公開され(doi: 10.1111/1346-8138.16780.)、国内の皮膚科医へ薬剤耐性白癬の情報を提供することができた。また薬剤耐性白癬へのデフィニティブセラピーを実施するため、薬剤感受性試験を行った。その結果、耐性が認められた場合、国内のどの薬剤による治療治療法を選択すればよいか、報告することもできた。以上、概ね2022年度の研究目的を遂行することができたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度も研究計画に従って、研究分担者、研究協力者が診察した白癬患者から抗真菌剤耐性株の分離を行い、耐性株の疫学調査を継続する。また、薬剤感受性試験結果から、耐性株感染患者に対する治療を実施し、治療に対する治療効果を確認する。主な治療法としては、TRBF耐性およびITCZ耐性については、ラブコナゾールによる内服またはルリコナゾール、エフィナコナゾールによる外用治療を行い、治療効果や再発についての診察記録を実施する。 得られた研究結果については、日本皮膚科学会および日本医真菌学会で発表するとともに、学術雑誌で国内外へ公開する。
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Causes of Carryover |
2022年度の研究計画では、研究分担者および協力者との連携がスムーズに遂行したこと、既存の機器、試薬を使用することができたため、予定よりも物品費の使用が少なくて済んだ。
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