2022 Fiscal Year Research-status Report
成体組織に胎児期由来原始マクロファージが常在する意義の解明
Project/Area Number |
22K08456
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高橋 尚史 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 助教 (70711000)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、マクロファージの起源に対する理解が大きく変わりつつあり、成体の多くの組織には、骨髄の幹細胞から分化した単球由来マクロファージに加え、卵黄嚢や胎児肝由来マクロファージが存在する事実が明らかとなり、その意義に注目が集まっている。本研究ではマウスのサンプルを用い、未だ不明の部分が多い、これら3種類の異なる組織由来マクロファージをex vivoで増幅培養し、それらの特性を比較した。 マクロファージ特有の分子の細胞表面発現を比較したところ、F4/80やMac-1などのレベルは相対的に骨髄由来マクロファージにおいて高く、卵黄嚢由来および胎児肝由来マクロファージ間ではこれらの発現レベルに大きな違いはなかった。 また、RNA-seqを行ったところ、3つの中では卵黄嚢及び胎児肝由来マクロファージは比較的近い遺伝子発現パターンを示す一方、細胞増殖関連遺伝子(Myc targets、E2F targets、G2/M checkpoint)発現は卵黄嚢由来マクロファージで最も高いことを見出した。これは、卵黄嚢由来マクロファージのin vitroにおける増植スピードが最も早いという結果と一致した。 さらに、卵黄嚢由来マクロファージは骨髄及び胎児肝由来のものと比べ、増殖に必須のサイトカインM-CSFを除去しても、ある程度長く生存しやすいことも見出した。つまり、卵黄嚢由来マクロファージは増殖能・生存能ともに他のマクロファージよりも高い可能性が示され、これは卵黄嚢などの胎生期由来マクロファージが成体組織においても常在し得るメカニズムの一つと予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題の一つである胎児期由来マクロファージ解析において、増殖スピードの違いやそれに関連する遺伝子発現などの特性について一定の成果を得られており、順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、この胎児期由来(特に卵黄嚢由来)マクロファージの高い細胞増殖能・長期生存能に寄与する分子メカニズムの解明をはじめ、in vitroだけでなく、マウスへの移植などのin vivoにおける解析も含め、これら由来の異なるマクロファージの性状・機能の詳細な解明を進めていく。 また、ヒト由来腹水マクロファージについても、解析を進めていく予定である。
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[Presentation] HIV-1感染におけるIL-32の意義2022
Author(s)
Naofumi Takahashi, Nasser Hesham, Youssef M. Eltalkhawy, Omnia Reda, Sameh Lotfi, Jun-ichi Sakuragi, and Shinya Suzu
Organizer
第69回日本ウイルス学会学術集会