2022 Fiscal Year Research-status Report
急性骨髄性白血病で高発現する好中球エラスターゼの機能解明と新規治療開発
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22K08474
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石川 裕一 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (80721092)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 急性骨髄性白血病 / セリンプロテアーゼ / 好中球エラスターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
CBF-AMLおよび他のAML患者試料60例を用いてAML細胞における、好中球エラスターゼ遺伝子群、ELANE、PRTN3、AZU1の発現量について定量PCR解析を実施した。ほとんど全てのAML細胞で、これら3遺伝子の発現が認められ、その発現量は概ね相関していたが、FAB分類における一部病型においては乖離が認められた。また、CBF-AMLでは、APLを除いた他のAMLと比較して、PRTN3に加えて、ELANEにおいても有意な高発現が認められた。一方、AZA1についてはその発現量に有意差は認められなかった。引き続き、これら発現量とAML病型、染色体・遺伝子異常、予後などの臨床情報との統合解析を行い、これら遺伝子群の高発現、異常転写産物発現の臨床的意義、関連する分子異常についてその詳細を明らかにする。 また、40例のAML患者細胞で抗悪性腫瘍剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤など各種分子標的薬と共に培養し、これら薬剤のin vitroにおける細胞増殖抑制効果と好中球エステラーゼ遺伝子群の発現量について解析を行い、併存する遺伝子変異などとの統合解析を実施中である。 次いで、再発難治性FLT3遺伝子変異陽性AML細胞を免疫不全マウス(NOGマウス)に移植して樹立した、患者由来AML細胞異種移植マウスモデル(AML-PDXモデル)に複数のFLT3阻害剤を投与し、治療後の残存細胞におけるシングルセルRNAシークエンスから得られたデータの解析を実施した。一部のFLT3阻害剤の治療後残存細胞では、ELANE、PRTN3、AZU1の好中球エラスターゼ遺伝子群を高発現するクラスターが認められ、好中球エラスターゼ遺伝子発現と分子標的治療の有効性、治療抵抗性との関わりが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AML細胞における好中球エラスターゼ群遺伝子の発現量定量のための測定系を確立し、多数の検体での定量解析を予定通り実施し、臨床情報、分子以上との関連についての解析、分子標的治療に対する感受性との関わりについて検討を行った。本解析により、AML細胞の分化段階、分化系統に関わらず、好中球エラスターゼ遺伝子群の発現が認められること、染色体異常などAML病型と発現量の関連について明らかにした。また、AML細胞における好中球エラスターゼ遺伝子群発現と、分子標的薬を含めた薬剤感受性との関わり、AML-PDXモデルを用いた検討についても予定通りに進めており、これらより本研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
AML細胞おける好中球エラスターゼ遺伝子群の発現が確認され、更に症例を蓄積することにより、病型、併存する分子異常による好中球エラスターゼ遺伝子発現の相違、薬剤感受性との関わりについて詳細な検討を進める。また、白血病細胞株、AML臨床検体で好中球エスタラーゼを欠損もしくは過剰発現させ、細胞死、細胞増殖への影響を検討すると共に、すでにPRTN3で確認されているRAS経路への影響について、他の好中球エラスターゼ遺伝子についても検証をおこなう。好中球エラスターゼ遺伝子発現、それらの下流シグナルとAMLの発症、進展、治療抵抗性に関わり、その経路を標的とする治療法について研究計画のよう研究を進める。
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Causes of Carryover |
試薬の納期の都合から差額が生じたが、次年度にて予定通り購入をすすめる予定である。
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