2022 Fiscal Year Research-status Report
骨髄異形成症候群におけるKMT2Dの役割の解明とそれに基づいた新規治療法の開発
Project/Area Number |
22K08481
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
安東 恒史 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 准教授 (90571357)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | MLL4 / KMT2D / ヒストンメチル化 / エピジェネティック / 骨髄異形成症候群 / 急性骨髄性白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、骨髄異形成症候群(MDS)で報告されているKMT2D遺伝子異常の意義を明らかにし、KMT2D遺伝子異常を持つMDSの病態の解明及び治療法の開発を行うことである。現在、我々は、Kmt2dの血液細胞特異的コンディショナルノックアウトマウス (cKO)でMDSの特徴的な表現型の一つである大球性貧血を呈するモデルマウスを作成した。このモデルマウスの観察を行ったところ、2ー3ヶ月目で白血球の著明な上昇、貧血の進行、血小板の減少など急性骨髄性白血病様の病態を取ることが明らかになった。 生存期間については、Kmt2dΔ/Δマウスの生存期間中央値は119日であった。一方で、Kmt2dΔ/+、controlマウスは150日以上観察したが現在すべて生存しており、今後も経過観察を継続する予定である。このように、Kmt2dΔ/Δマウスの生存期間はKmt2dΔ/+マウス、コントロールマウスに比較して有意に短縮していた。 Kmt2dΔ/Δマウスは、100日以前ではMDS様の病態を示し、その後急性白血病様の病態を示している。これは臨床で観察される、高リスクMDSから急性骨髄性白血病へ進展していく過程が再現出来ている可能性を考えている。 しかし、当初の我々の予想より早く病態が進行し死亡したため、本年度はKmt2dΔ/Δマウスの検体採取を含め十分な解析が出来なかった。現在、再度Kmt2dΔ/Δマウスを作成し、MDS様の病態の時期と急性骨髄性白血病様の病態に変化した時期の両方において骨髄及び末梢血の詳細な解析を再度行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究でMDSの病態を再現することを目的にKmt2dのcKOマウスを作成し解析を行っている。我々の予想どおりMDS様の病態を呈し解析可能なモデルマウスとなった。また、このマウスモデルは臨床で経験するMDSから急性骨髄性白血病への移行を短期間でみることが出来るマウスである可能性が高く、このマウスの解析を継続することは極めて重要であると考える。 一方で、予想より早く急性骨髄性白血病へ移行し、死亡することも明らかになった。そのため、検体採取のための骨髄採取や解剖などのマウスの病態の解析を行う時期の設定に時間を要した。 また、造血幹細胞分画(LSK細胞分画)を用いた、RNA-seqやChip-seqを行うことを計画していた。一匹のマウスから十分量の検体が確保出来ないことは予想しており、数匹をまとめて解析することを予定していた。しかし、MDSの病態から急性骨髄性白血病への移行は極めて早く、また発症時期や移行の時期に個体差が大きいことが明らかとなった。このことより、複数のマウスから検体を採取し一検体としてまとめて解析することは病態を正確に反映しない可能が高いと考えた。造血幹細胞分画の採取方法や解析手法について現在再度検討中であり、時間を要している。
|
Strategy for Future Research Activity |
マウスモデルを用いた検討では、マウスから造血幹細胞分画を分取しRNA-seqを行い遺伝子プロファイリング比較する。発現に変化のあった遺伝子群を同定し、KEGG pathway解析やgene set enrichment analysis (GSEA)をもちいて、Kmt2dが関与する重要な遺伝子経路を同定する。造血幹細胞分画を対象に抗Kmt2d抗体と抗ヒストンH3K4メチル化抗体を用いたChip-seqを行い、これらの結果と、RNA-seqで同定された遺伝子経路に含まれる遺伝子などと比較することで、Kmt2dがコントロールしている遺伝子とその役割を明らかにする。 Kmt2dが調整する重要な遺伝子の同定のため、QT-PCRやWestern blottingで上記の候補遺伝子/蛋白の発現が変化していることを確認する。確認できた遺伝子について正常骨髄、MDS細胞株、Kmt2d cKOマウスの造血幹細胞(LSK細胞)での過剰発現またはshRNAによる発現抑制や阻害剤を用いた検討を実施してその機能を検証する。 臨床検体を用いた解析では、MDSの治療前骨髄検体や、AZA-5治療によって貧血が改善した寛解期検体などの臨床検体を用い、上記検討で同定された遺伝子発現と予後を含めたMDS臨床病態との関連、さらにその遺伝子が新規治療ターゲットとして有用か、検討する。また臨床検体を用いて、shRNAによる上記治療標的候補遺伝子のノックダウンや、候補遺伝子の過剰発現または阻害剤投与を行い、治療標的として適切か検討する。
|