2022 Fiscal Year Research-status Report
先天性貧血を引き起こすmRNA特異的な翻訳調節機構の解明
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22K08508
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
上地 珠代 宮崎大学, 医学部, 准教授 (10381104)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | リボソームタンパク質 / 貧血 / ゼブラフィッシュ / ゲノム編集 / 翻訳 / リボソーム病 |
Outline of Annual Research Achievements |
リボソームの生合成に関わる因子の異常が、様々な疾患の原因になり得ることが強く示唆されている。これらは「リボソーム病」と呼ばれ、mRNA翻訳の際のファインチューニングの乱れにより発症すると推測している。先天性の赤芽球癆であるダイアモンド・ブラックファン貧血(DBA)はリボソーム病の一つである。これまでに、ゼブラフィッシュのDBAモデルにおいて特定のリボソームタンパク質(RP)の欠損が、特定の遺伝子(造血や糖鎖修飾に関与)の翻訳効率の低下を招くことを見出した。しかし、その翻訳調節の分子機構を解く手がかりはつかめていない。本研究では、異常リボソームと翻訳開始因子との関係に着目し、赤血球造血に関与する遺伝子の翻訳調節の分子メカニズムを、ゼブラフィッシュを用いたin vivoの系で探求することを目的とする。 RP遺伝子に変異が確認されたDBA患者のうち、約75%はRPS19、RPL11、RPL5遺伝子のいずれかのヘテロ変異を有する。変異の種類は様々であるが、ミスセンス変異については機能喪失を起こす場合と、あまり影響しない場合があることが培養細胞による実験で示唆されたため、ゼブラフィッシュを用いた機能解析を試みた。上述3つのRP遺伝子について、変異を含むmRNAを合成し、内在性のRP遺伝子をノックダウンすると同時に変異型mRNAを受精卵へ注入した。受精後48時間胚をヘモグロビン染色し、赤血球の造血にどの程度影響が及ぼされるかを確認したところ、in vivoにおいても変異ごとに機能的な違いがあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異の種類によって機能的な違いがあることを検証することは、診断においてもリボソームの翻訳機能の解明においても重要なポイントになる。得られた結果を基盤として、RPの変異が翻訳開始因子の機能にどのように影響するのか解析を進める予定である。今後の方向性が具体的に見えてきたことから、研究はおおむね順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ゼブラフィッシュの複数のRP遺伝子のノックダウン胚、またはゲノム編集胚を用いてポリソーム解析を行い、ポリソームを形成するmRNAを精製し、RNA-seq解析により翻訳効率の変動を捉える。また、ゼブラフィッシュ胚を用いた翻訳開始因子の発現様式の解析と、発現抑制による造血への影響の解析を行う。
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Causes of Carryover |
汎用の試薬や消耗品を用いることが多く新たな物品の購入が少なかったこと、海外渡航に関する学内規定により国際学会への参加を見送ったことで未使用が生じた。ゼブrフィッシュの飼育管理及び実験を行う補助員の人件費として計上する予定である。
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Research Products
(2 results)