2022 Fiscal Year Research-status Report
特発性多中心性キャッスルマン病の病型をクラスタリングする分子基盤研究
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22K08524
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
川上 純 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (90325639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 剛 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (30821665)
住吉 玲美 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (70859363)
古賀 智裕 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (90537284)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | iMCD-TAFRO / iMCD-NOS / iMCD-IPL / TAFRO / シングルセルRNAシーケンス(scRNAseq) / イムノフェノタイピング / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
R4年度は末梢血液細胞のscRNAseqとイムノフェノタイピング、および、血清プロテオミクスの解析を開始した。その解析の基盤となるのは臨床分類とリンパ節病理分類であるが、臨床分類においては、iMCD(特発性多中心性キャッスルマン病)をiMCD-TAFRO、iMCD-NOS、iMCD-IPLの3つに分けてリンパ節病理分類との関連を解析するのがより明確との報告がなされ、まずはそれに基づき、コホートにおける臨床分類を再評価した。すなわち、コホート全体を、iMCD-TAFRO、iMCD-NOS、iMCD-IPL、TAFROの4つに分類した。それでは評価可能な275例において、iMCD-TAFRO 74例、iMCD-NOS 59例、iMCD-IPL 113例、TAFRO 29例となり、これは妥当な臨床分類と判断された。リンパ節分類についても、病理所見を血管増生パターン、形質細胞増生パターン、胚中心形成パターン、血管内皮核腫大パターンなどのコンポネントで重みづけする試みが報告され、こちらは再評価中であるが、妥当性があることが示されている。そこでまずは臨床像が典型的な症例を選択しての末梢血液細胞のscRNAseqを実施した。そこでは、1.TAFRO徴候(未治療)があれば単球が多い 2.NOS(未治療)ではCD4陽性T細胞が少ない 3.iMCD-TAFROとiMCD-NOS(共に未治療、NOSがIPLか否かは確認中)のGSEAでは酸化的リン酸化、I型IFN、NF-kappaB、TNF-alpha、Mycなどで差異がある 4.治療前後のGSEAではTAFROとNOSで共通および個別に変動する経路がある ことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床分類とリンパ節病理分類の新しい方向性があり、それへの対応を第一に行なったが、コホートにおいて、それらで適切に分類出来ることが明らかとなった。今までの治療薬への反応性やリンパ節病理組織像の多様性からscRNAseqも単一ではないことが予想されてはいたが、今回、世界に先駆けて、未治療iMCDとTAFRO患者の末梢血液細胞のscRNAseqを実施し、臨床分類間におけるGSEAでの相違を明らかとした。解析数は少ないが、治療薬はMOAが異なる2薬剤の治療前後におけるscRNAseqを行っており、こちらの意義付けにも大いに期待が持てる。プロテオミクスにおいてはすでに明らかとしたIGFBP-1を含む新たな解析をR5年度中には完了させ、イムノフェノタイピングのデータを含めて評価する。また、各コンポネントで重みづけするリンパ節組織病理と遺伝子発現、イムノフェノタイピング、プロテオミクスとの関連解析もR5年度中には大きく進捗させ、末梢血液細胞との統合的な理解を進め、海外(特に米国)との国際共同研究を発展させる。
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Strategy for Future Research Activity |
iMCD-TAFRO、iMCD-NOS、iMCD-IPL、TAFROは希少疾患であり、上述のように、新たな臨床分類と病理分類を組み合わせての評価が世界レベルで進行している。そこで、その潮流に則り患者群を分類し、その中での典型的なサブグループから、まずは(比較的)網羅的な(広範な)解析を実施し、臨床分類と病理分類の背景を形成するエンドタイプ(endotype)の評価を試みる。R4年度におけるscRNAseqで、preliminaryであるが、臨床分類間および治療薬MOA間におけるGSEAでの相違を明らかとした。今後はscRNAseq(1細胞における遺伝子発現)、プロテオミクス/ELISA(タンパク質発現)、イムノフェノタイピング(大まかな細胞亜群)を中心に末梢血液細胞とリンパ節組織免疫担当細胞の相関を含めたオミクス解析を進め、iMCD/TAFROの病型をクラスタリングする分子基盤研究を完成させ、iMCDの精密医療を構築し、希少炎症性疾患iMCDの予後改善と治療法の進歩に繋げる。 興味深いことに、本邦と海外(米国)では、iMCD/TAFROにおける臨床分類と病理分類の見解が異なることが多々あり、この点も分子基盤クラスタリングに基づいて考察し、国際的なコンセンサスの形成を目指す。
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Causes of Carryover |
(理由)当初の計画より少ない試薬類で実験が遂行できたため。 (使用計画)令和4年度に確保した検体の解析費用に充てる。
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Research Products
(6 results)