2022 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the usefulness of tRNA fragments as biomarkers for rheumatoid arthritis and their effects on synovial cells
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22K08535
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
山崎 聡士 久留米大学, その他部局等, 准教授 (30367388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井田 弘明 久留米大学, 医学部, 教授 (60363496)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 関節リウマチ / 滑膜細胞 / バイオマーカー / 転移リボ核酸断片 / リボ核酸配列解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis: RA)では、蛋白質をコードしないnon-coding RNA(ncRNA)に特有の発現変化が起こることが報告されている。しかし、その病態への影響に関しては不明な点も多い。申請者は古典的ncRNAの1つである転移リボ核酸(transfer RNA:tRNA)の切断片が翻訳抑制機能を有することを発見、「tiRNA」として報告した。その後、tiRNAが抗アポトーシス作用を有すること、マウスの自己免疫疾患モデルに影響を与えることが判明し、ヒト疾患への応用研究も展開されつつある。 本研究では、RAにおけるtiRNAのバイオマーカーとしての可能性を探り、さらにtiRNAが積極的に病態に関与しているかを検証する。その方法として、生物学的製剤による治療の前後にRA症例の血液を採取し、血中のtiRNAの変化を検討し、バイオマーカーとしての価値を検証する。培養細胞研究では培養滑膜細胞におけるtiRNAの制御、およびtiRNAが滑膜細胞に与える影響を検討する。 バイオマーカーに関する研究では、リボ核酸の配列解析(RNA-Seq)が鍵となる。特にサンプル間バリアンスを回避する工夫が重要であり、全てのtRNA断片を漏らさず解析するための技術構築が決め手となる。2022年度はこの技術的解決に成功した。そのポイントは、tRNA断片と同じサイズのRNAの断端のリン酸化を一律に除去し、再びその全てをリン酸化するという方法である。これにより異なる断端を有するRNAを全て一様に配列解析することが可能となった。 培養細胞研究は研究施設移動のため研究に遅れが生じているが、今後広島大学リウマチ・膠原病科で継続的に行われている滑膜細胞研究プラットフォームを使用して、研究実施が可能な状況となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究一年目の大きな目的であった、サンプルバリアンスに対する問題は解決した。転移リボ核酸断片を生み出す酵素の種類によって、転移リボ核酸断片の3'側の切断部の状態が異なることが予想され、このことがリボ核酸の配列解析に必要なアダプターの結合に大きな影響が生じるため、一様な断端に揃えるためのステップを行うことで、解析されるサンプルと解析から外れるサンプルが生じることを回避する必要があった。 これに対して、転移リボ核酸断片と同じサイズのリボ核酸をゲル分離後に回収し、calf intestinal alkaline phosphataseを用いてその全てのリボ核酸からリン酸を除去する。その後、T4 polynucleotide kinaseを用いて、改めて全てのリボ核酸の3'側にリン酸化を施す。このステップを加えることで、もれなく全ての転移リボ核酸断片に対して、一様にIllumina社のTruSeq Small RNA library preparation kitによるアダプター結合が可能となることが確約される。 遅れている部分は症例サンプルの集積である。これは研究責任者の施設であった久留米大学医療センターにおける関節リウマチ治療が2022年度中に終了となったためである。滑膜細胞を用いた研究に関しても、施設移動のため遅れが生じていた。
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Strategy for Future Research Activity |
症例サンプルの集積の遅延に対する打開策として、共同研究を行う広島大学リウマチ・膠原病内科との共同研究によってRA症例のサンプルを取得していく事が可能となったため、今後の研究継続に関する問題が解消された。滑膜細胞を用いた研究に関しても、滑膜細胞研究を継続に行なっている広島大学リウマチ・膠原病科のアセットの使用が可能となり、研究遂行が可能となった。このため、2022年度の遅れは早急に取り戻せると考えられる。
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Causes of Carryover |
2023年3月に久留米大学医療センター リウマチ・膠原病センターが閉鎖となったため症例の集積が困難となり、研究の本体である症例を用いたtRNA断片の解析が不能となった。この間のサンプル処理費用、およびRNA配列解析費用の執行は、広島大学病院リウマチ・膠原病内科との共同研究によってサンプル採取が可能となる2023年度に使用することになった。
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