2022 Fiscal Year Research-status Report
Layilinを中心とした関節リウマチの滑膜増殖機構の解明
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22K08555
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
加藤 智啓 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80233807)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 滑膜線維芽細胞 / 関節リウマチ / 上皮間葉移行様変化 / 分子標的治療 / layilin |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は「Layilinを介したTNF-α誘導性上皮間葉移行(EMT)様変化がRA滑膜細胞の異常増殖の本態である」との仮説を立てた。本研究ではすでに作製しているLayilinノックアウト(-KO)細胞及びヒト滑膜細胞等やLayilinノックイン(-KI)マウスを用いて本仮説を実証することを目指し、Layilinを標的としたRA滑膜増殖抑制治療法の開発につなげたい。 In vitroの実験では、Layilinがcyclin-dependent kinase 1 (CDK1)とdynamin-related protein1 (DRP1)の活性化を介して、ミトコンドリア形態を長いチューブ状のfusion型から短い粒状のfission型に変え、細胞の浸潤能を高める可能性を報告している(Tsutiya A, 2021)。これらに加え、ライリンが複数の細胞株で細胞増殖を促進することや(未発表)、LayilinがCDK1の脱リン酸を担うCdc25Cホスファターゼの分解を抑制することを見出した(未発表)。以上のことから、ライリンはCdc25Cの分解を抑制することでCDK1の活性状態を維持し、細胞増殖に寄与する可能性が考えられる。滑膜細胞株について同様の機序があると考えられ現在検討している。 In vivoの実験では、CRISPR/Cas9法を用いたLayilin-KIマウス(F0)の作製に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Layilin依存性上皮間葉移行(EMT)様変化の観点から、Layilinの機能探索をin vitro及びin vivoの両面から検討した。In vitroに関しては、Layilinが細胞増殖に関与していることを明らかにし、その調節機序の解明を進めている。In vivoに関してはLayilin-KIマウスの作製(F0)に着手し、現時点で大きなトラブルなく進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、Layilin-KO細胞及びヒト滑膜細胞等やLayilin-KIマウスを用いて、in vitro及びin vivoの両アプローチにより、「Layilinを介したTNF-α誘導性のEMT様変化がRA滑膜細胞の異常増殖の本態である」との仮説を実証する。 In vitroでは、以下の点について明らかにする。1)LayilinによるCDK1活性化を介した細胞増殖の機序を明らかにすると共に、主にヒト滑膜線維芽細胞・ヒト滑膜線維芽細胞株などでも同様であることを証明する。2)TNF-α以外に滑膜細胞にLayilin依存性 EMT 様変化を起こす分子があるかを明らかにする。3)Layilinの上下流に位置する分子を明らかにする。4)Layilinを標的として滑膜細胞の増殖能・浸潤能を抑制することが可能であるか否かを明らかにする。5)TNF-α誘導性EMT様変化後で滑膜細胞の増殖能・浸潤能が増加するか否かを明らかにする。6)Layilinを抑制しうる分子、あるいはLayilin 経路を遮断できる分子を探索する。 In vivoでは下記の点について、Layilin-KIマウスを用いて明らかにする。7)Layilin-KIマウスを作製し、形態学的特徴・生化学的特徴を検討する。8)Layilin-KIマウスを用いたコラーゲン誘導性関節炎モデルの解析により、関節炎におけるLayilinの役割を明らか にする。9)Layilin-KIマウスと野生型マウスとでの、臓器・細胞における発現タンパク質の差異をプロテオミクス解析により明らかにする。10)Layilin-KIマウスのリンパ球等の増殖能、サイトカイン・抗体等の産生能を明らかにする。 以上の過程で、知的財産に相当するものは所属大学のTLO(株式会社MPO)を通して特許出願を行う。また、成果を論文としてまとめ、国際的学術雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
Layilin-KIマウス作製には、インジェクション、マウスの出産、ジェノタイピング、目的マウスの繁殖及び凍結胚の作製と早くても1年を要する。全工程完了後の清算のため年度を跨いでの清算となった。Layilin-KIマウス作製完了次第、速やかに清算する予定である。それ以外の費用は年度計画通りに使用する予定である。
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