2022 Fiscal Year Research-status Report
SARS-CoV-2感染におけるマスト細胞の関与と重症化機序解明に向けた研究
Project/Area Number |
22K08564
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
茂木 正樹 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (20363236)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
劉 爽 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (60403812)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | SARS-CoV-2 / マスト細胞 / MCP2 / キマーゼ / 複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2 (SARS-CoV-2) の重症化を引き起こす複数の炎症誘発性サイトカインの放出起因に関連し、マスト細胞のホスト細胞へのウイルス侵入に対する影響についての検討を進めた。SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質が組み込まれたシュードビリオンはマスト細胞の活性化を引き起こし、マスト細胞由来のキマーゼであるMCP2がスパイクタンパク質と複合体を形成し、プロテアーゼ依存性のウイルス侵入を促進することが見出された。ウイルス侵入を定量化した結果から、マスト細胞安定剤であるケルセチンは、非処理細胞と比較して、潜在的にウイルス侵入の 41.3% を阻害する作用を示したが、キマーゼ阻害剤として機能するキモスタチンは、ウイルス侵入の52.1%を抑制することが見出された。一方でマスト細胞欠損マウスを使用した実験から、マスト細胞は上気道の初期のウイルス負荷に影響を与える可能性があり、その結果、下気道へのウイルス侵入のリスクが高まることが示された。さらに、マスト細胞欠損マウスは、ウイルス接種後の後期に進行中の感染を示したが、野生型マウスではウイルス陽性細胞のクリアランスが観察された。以上より、マスト細胞は、SARS-CoV-2のウイルス侵入に対する保護効果を持つ一方、その後の病原性に影響を与え、善悪両方を備えた多面的な免疫調節因子として機能することが見出された。SARS-CoV-2の治療におけるマスト細胞安定剤とキマーゼ阻害剤は、感染段階とサイトカインストームのリスクに関して有用である可能性があり、今後マスト細胞に影響を与える薬剤使用に関する空間的・時間的最適化の検討、および感染関連因子の探索などを進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マスト細胞によるSARS-CoV-2への影響について多面的に証明する実験が進み、第一報の論文報告をすることができた。 Shuang Liu, Yasuyuki Suzuki, Erika Takemasa, Ryusuke Watanabe, Masaki Mogi. Mast cells promote viral entry of SARS-CoV-2 via formation of chymase/spike protein complex. Eur J Pharmacol. 930:175169, 2022.
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症である、「long COVID」における免疫記憶の関与を検討するために、気管支、肺に局在するマスト細胞や、記憶T/B細胞、気道樹状細胞などに着目し、感染関連因子をトランスクリプトーム解析やプロテオミックスなどの手法を用いて網羅的に探索する。ウイルス関連遺伝子情報が宿主細胞に与える影響や、免疫記憶機構とその制御機構の変化を解析する。また、マスト細胞安定剤とキマーゼ阻害剤の投与時期によりウイルス侵入とその後の感染への影響についての検討も進める。
|