2022 Fiscal Year Research-status Report
トリプトファン代謝制御を利用した慢性HBV感染症に対する治療的ワクチン療法の開発
Project/Area Number |
22K08590
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
伊藤 弘康 藤田医科大学, 医学部, 教授 (80373075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 哲也 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (10288508)
安藤 達也 藤田医科大学, 医学部, 助教 (50796068)
齋藤 邦明 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (80262765)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | HBV / トリプトファン代謝 / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性のHBV感染症は、肝硬変・肝臓癌へと進展する予後不良な感染症であるが、現在のところHBVを完全に排除する治療法は確立されていない。HBV感染症では、宿主のHBVに対する免疫応答が低下していることが知られておりこの免疫寛容状態を打破することによりHBVの排除が期待できる。そのため、効果的なワクチン療法が期待されるが免疫チェックポイントの制御が重要であると考えられる。近年、トリプトファン代謝産物が様々な免疫抑制作用を有していることが報告されており、本申請研究課題ではこの代謝経路の制御により強力なHBVに対する免疫応答の誘導をHBV感染モデルマウスを用いて確立する。また、HBVワクチン後のヒト検体を用いてトリプトファン代謝産物の抗原特異的免疫応答への影響も検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画1)では、ワクチン接種後のトリプトファン代謝の動態を検討する予定であった。このため、野生型マウスに対して、HBVタンパク+アジュバンド(cGAMP(STINGリガンド))を1回または2回接種した後、所属リンパ節および脾臓でのキヌレニン代謝経路に関与する酵素(インドールアミン酸素添加酵素(IDO)、トリプトファン2,3ジオキシゲナーゼ(TDO)、キヌレニン-3-モノオキシゲナーゼ(KMO)、キヌレニンアミノトランスフェラーゼ(KAT)、キノリン酸.ホスホリボシルトランスフエラーゼ(QPRT))の発現をquantitative RT-PCR法およびウエスタンブロット法にて検討した。また、血清および脾臓の溶解液をサンプルとして高速液体クロマトグラフィーにてキヌレニン経路の代謝産物であるトリプトファン(TRP:)、:キヌレニン(KYN)、3-ヒドロキシキヌレニン(3-HK)、キノリン酸(QUIN)、キヌレン酸(KYNA)、キサンツレン酸(XA)の濃度を測定する予定であったが年度内にはすべては測定できず継続中である。計画2)では、トリプトファン代謝酵素の制御下でのワクチンの効果の検討を行う予定であった。初年度はKMO阻害剤またはKAT-II阻害剤を使用して検討を行った。血清中のHBsAbの測定、ELISPOTアッセイを用いた脾細胞でのHBV関連抗原に対するIFN-γ産生能の解析、フローサイトメーターでの抗原特異的CD4およびCD8T細胞解析など十分な検討ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、主に HBV感染モデルマウス(HBVトランスジェニック(Tg)マウス)を使用した検討を行う。初年度野生型マウスに対してKMO阻害剤またはKAT-II阻害剤を使用して行った検討をHBVTgマウスにても行う。HBVTgマウスでは、HBV特異的液性免疫応答の解析(血清中HBs抗体測定など)や細胞性免疫応答の解析(ELISPOTアッセイによる抗原特異的IFN-γ産生能の検討など)だけでなく、肝臓の組織学的検討(炎症の程度や浸潤細胞の検討)や血清および肝内のHBs抗原量の測定などを行う。また、免疫後(阻害剤あり・なし)のHBVTgマウスでの血清および脾臓の溶解液をサンプルとして高速液体クロマトグラフィーにてキヌレニン経路の各種代謝産物の測定も行い、メカニズムの解析をする。
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Causes of Carryover |
トリプトファン代謝産物の解析に費用を要するが、前年度ではその解析が十分でなく次年度使用額が生じた。また、既存のPCRプライマーや試薬を一部の実験に使用し解析を行ったためそれほど前年度の使用額が多くなかったと考えられる。
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