2022 Fiscal Year Research-status Report
一細胞レベルで肝細胞の局在と機能の関係を明らかにし、肝糖代謝に新知見を加える
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22K08619
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
藤本 真徳 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (60835081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 知明 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (50447299)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 空間的遺伝子発現解析 / 一細胞解析 / 糖新生 / 肝臓 / 細胞間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓における糖新生亢進は、肥満糖尿病における主要なインスリン抵抗性病態基盤であり、重要な治療標的となる。糖新生から解毒作用まで多面的役割を担う肝細胞は、均一な集団ではなく、機能的に多様な集団に分かれるが、シングルセルレベルでは十分に解析されていない。研究代表者はこれまでに、マウス肝臓組織のsingle cell RNA-seq解析により、2型自然リンパ球を活性化させることで肝糖新生抑制機能を介して、生体の血糖改善作用を引き起こす機序を明らかにした。その過程で、特定の肝細胞クラスターがG6pcを含む糖新生酵素群を極めて高いレベルで発現し、免疫細胞と強く相互作用する知見を得た。しかしながら、この糖代謝制御に重要な肝細胞クラスターの制御メカニズムや起源・特性などは、十分に明らかでない。本研究の目的は、“Visium”という新たな空間的遺伝子発現解析手法を用い、位置情報や周囲の多様な細胞との相互作用と紐付けしながら、糖新生に寄与する新たな肝細胞クラスターの局在・周辺細胞との連関とその制御メカニズムを、シングルセル情報から統合的に明らかにすることである。本研究成果は、シングルセル解析に基づく新しい解剖学的病態生理に発展するだけでなく、これまでのコンセプトに無い「特定の肝細胞クラスター」を標的とした肝インスリン抵抗性病態機序や、肝糖代謝制御に関わる新規治療標的のシーズ提案につながることが期待される。 その実現に向けて、一つ一つ着実に実験系、解析系の条件検討を重ね研究を進展させている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝臓における糖新生亢進は肥満糖尿病の病態の基礎であり、糖新生亢進に続く血糖上昇は各種合併症の進展を招く。肝臓は局在と機能に密接な関連があり、申請者がこれまで行ってきた、肝臓組織細胞の一細胞解析(single cell RNA-seq)からも、古典的に良く知られた糖新生機能と局在との強い関連を認めている。従って、局在と機能を紐づけしたまま解析する、空間的遺伝子発現解析の意義は大きい。申請者は空間的遺伝子発現解析(10x Visium)の条件検討、データベースを参照した解析などを行っている。また、Visiumの解像度を補うために、細胞種のannotationが必要であり、3' GEXに加えて、10x fixed RNA profiling (FRP)や、10x mutliomeといったアプローチもあわせて条件検討し、解析を行っている。これらの手法を複合的に用いる、すなわち一細胞レベルの局在情報や、epigenomeの情報を統合解析することで、これまでの手法だけではわからなかった、肝細胞の局在と機能の関係性を明らかにすることが期待される。これらの解析を行ううえで、実験系の条件検討だけではなく、解析系の確立は必須である。これらのツールの開発・販売元である10xの公開しているCellranger count, Cellranger Arc, Spacerangerなどのmapping toolなどに加え、3rd partyの公開するSeurat package, 関連toolを複合的に用いる必要があり、これらの習得にもかなりの時間を要しているが、順調に解析の幅を広げつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに肝臓組織を用いた空間的遺伝子発現解析の検討や、10x Fixed RNA Profiling, Multiomeを用いた検討を進める。一細胞レベルのmotif 解析、相互作用解析、他臓器との比較、10x Visium以外のより高解像度のspatial transcriptomicsのapplicationとして、10x xenium in situなども実施を検討中である。xenium in situは、in situ hybridizationを基礎とした高解像度のspatial transcriptomicsであり、whole transcriptomicsである10x visiumを補完するかたちで用いることができると考えられる。いずれにせよこれらのApplicationは非常に高価であり、利点、欠点、目的に最適かなど多角的に考慮したうえで実施を検討する。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Liver group 2 innate lymphoid cells regulate blood glucose levels through IL-13 signaling and suppression of gluconeogenesis2022
Author(s)
Masanori Fujimoto, Masataka Yokoyama, Masahiro Kiuchi, Hiroyuki Hosokawa, Akitoshi Nakayama, Naoko Hashimoto, Ikki Sakuma, Hidekazu Nagano, Kazuyuki Yamagata, Fujimi Kudo, Ichiro Manabe, Eunyoung Lee, Ryo Hatano, Atsushi Onodera, Kiyoshi Hirahara, Koutaro Yokote, Takashi Miki, Toshinori Nakayama & Tomoaki Tanaka
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 13
Pages: 1-21
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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