2023 Fiscal Year Research-status Report
副腎皮質細胞の形質遷移に着目した細胞層構築・維持と破綻に関する分子基盤の解明
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22K08634
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
向井 邦晃 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80229913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西本 紘嗣郎 宮崎大学, 医学部, 助教 (00365363)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アルドステロン / コルチゾール / ステロイドホルモン / 組織構築 / 副腎皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト成体正常副腎皮質の複数試料から調製された細胞について、単一細胞ごとに全遺伝子mRNAのカウントデータを得た。カウントデータを細胞形質とし、Pythonの解析ツールを用いて細胞形質の次元削減、および、細胞形質に基づくクラスタリングを行った。全細胞の2次元展開上のクラスタリング表示、ならびに各クラスターにおける個別遺伝子mRNAレベルの統計的表示を得た。各クラスターのステロイド産生系遺伝子群のmRNAレベルから、皮質細胞のクラスター群を同定した。皮質細胞クラスターについて試料由来の細胞数内訳を算出したところ、構成比はクラスターを通して一定ではなく、複数のクラスターの間で大きく異なっていた。すなわち、試料ごとに各クラスターへ分類される皮質細胞数の割合が異なり、皮質細胞クラスターの一部では各試料由来の構成細胞数は顕著に偏在していた。これらの結果は、成人の正常副腎皮質は、個体の間でよく似た形質を持つ(同一クラスターに分類される)実質細胞を含むが、同時に個体間で形質上の差異を持つ(別のクラスターに分類される)実質細胞を含むことを示唆する。また、これらの皮質細胞クラスター群は次元削減法による2次元展開表示上で、すべて隣接して位置することが想定されたが、複数箇所に分かれることが判明した。これは皮質細胞の中で、形質の差異が不連続である細胞集団が存在することを示唆する。本課題では、副腎皮質組織を被膜から最奥部へ形質が連続的に推移する細胞から構成されると想定していたが、解析結果から必ずしも細胞形質は連続的に推移しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題では、副腎皮質組織を被膜から最奥部へ形質が連続的に遷移する細胞集団と見なして研究計画を進め、形質推移の解析から従来検出できなかった少数で過渡的に生じる細胞の同定を目指してきた。これまでの解析により、連続的な形質推移を検出できたが、少数で過渡的に生じる細胞の同定に至っていない。一方、研究経過において皮質細胞の中に想定していた形質の連続的な推移に当てはまらず、不連続性を示す形質の差異を持った細胞が含まれていることが示唆されたことは想定外の研究の進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
副腎皮質細胞において形質の差異に連続性が認められる細胞群が確認されたが、その一方で形質の差異に連続性が認められない細胞群が存在することが示唆された。従来の研究計画に従い、形質の差異に連続性が認められる細胞群の詳細を解析することに加えて、形質の差異に不連続性を示す細胞群について、特徴的な遺伝子発現、これらの細胞の組織内での検出を行う。
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Causes of Carryover |
試料の調製、ライブラリ作製、塩基配列解析などに関する物品費等の使用額が予定と比較して減少した。ヒト正常副腎組織と副腎腫瘍を含む組織、および、実験動物において副腎皮質の層構築に影響を及ぼす処理を行い、副腎皮質の解析を実施するための物品費を支出する。副腎皮質層機能因子に対する特異的抗体の作製を予定する。
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