2022 Fiscal Year Research-status Report
グルカゴン誘導性長鎖ノンコーディングRNAの代謝調節機能の解明
Project/Area Number |
22K08639
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
長沼 孝雄 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 上級研究員 (40466462)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 長鎖ノンコーディングRNA / 転写制御 / 肝臓 / 糖新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グルカゴン誘導性長鎖ノンコーディング(lnc)RNAの糖代謝調節における役割とそのメカニズムを解明することを目的としている。 2022年度は、in vivoにおけるLnc-GI1の糖新生に対する役割について機能欠損および機能獲得実験より検討した。まず、野生型マウスを対照として、Lnc-GI1 ノックアウト(KO)マウスの絶食時の肝臓における糖新生系酵素遺伝子の発現と血糖値を調査した。Lnc-GI1 KOによって肝臓での糖新生系酵素遺伝子の発現が減少し、絶食時の血糖値が低下した。また、肝臓からの糖新生を評価するため、ピルビン酸負荷試験とグリセロール負荷試験を実施したところ、Lnc-GI1 KOマウスではピルビン酸およびグリセロールを基質とした糖新生が減少していた。さらに、Lnc-GI1 KOマウスに対してアデノウイルスベクターを用いてLnc-GI1遺伝子を入れ戻したところ、糖新生系酵素遺伝子の発現および肝糖新生がレスキューされた。これらの結果から、Lnc-GI1は、in vivoにおいて肝臓での糖新生系酵素遺伝子の発現を増加させ、肝糖新生を促進させることが明らかとなった。 次に、肥満糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスにおけるLnc-GI1の機能抑制の効果について検討した。アデノウイルスベクターを用いたCRISPRi法によってマウス肝臓においてLnc-GI1をノックダウン(KD)させたところ、対照マウスに比べて肝臓における糖新生系酵素遺伝子の発現が減少し、絶食時の血糖値が低下した。また、Lnc-GI1 KD db/dbマウスでは、対照マウスに比べてピルビン酸およびグリセロールを基質とした糖新生も減少していた。これらの結果から、Lnc-GI1の機能抑制によって糖尿病の高血糖を改善できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、当初の計画書通りに研究が進展し、Lnc-GI1が、in vivoにおいて肝臓の糖新生系酵素遺伝子の発現を増加させ、肝糖新生の促進に関与していることを明らかにした。また、Lnc-GI1の機能抑制によって糖尿病の高血糖を改善できることを示唆する結果を得た。以上のことからも、おおむね順調に進展しているという判断に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、当初の計画に即して研究を推進していく予定である。2023年度については、Lnc-GI1の肝糖新生促進の分子メカニズムを解明するために、①Lnc-GI1と転写因子HNF4αとの相互作用について検証し、②Lnc-GIが、HNF4αの糖新生系酵素遺伝子プロモーター領域への結合促進に寄与することを検討していく予定である。また、2024年度については、Lnc-GIのヒトオーソログhLnc-GIを同定し、その糖新生に関する機能を明らかにしていく予定である。
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