2022 Fiscal Year Research-status Report
NASH・肥満発症における肝細胞・肝星細胞のPin1の役割
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22K08655
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中津 祐介 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (20452584)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Pin1 / NASH / PPAR / 分子シャペロン |
Outline of Annual Research Achievements |
プロリン異性化酵素Pin1は、標的蛋白のpSer/pThr-Pro配列に結合し、プロリンのシスートランス異性化を行うことにより、その機能を調節している。本研究では、Pin1を介した非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)発症機構を明らかにすることを目的として研究に着手し、以下のことを明らかにした。 ①肝細胞特異的Pin1 KOマウスを作成し、NASH誘発食である高脂肪・高コレステロール食 (HFHC)を負荷した。意外なことに、KOマウスは、体重増加がWTマウスと比較して軽度であり、これと一致して肝重量や脂肪重量もKOマウスで低値であった。 ②HFHC食負荷後、グルコース負荷試験やインスリン負荷試験を行い、耐糖能を検討したところ、KOマウスで良好な値を示した。また、インスリンを負荷した後、肝・筋・脂肪を摘出し、Aktのリン酸化をウエスタンブロットで測定したところ、KOマウスの肝臓は、WTと比べてAKtのリン酸化が強く認められた。一方、筋や脂肪組織では、差が認められなかった。 ③HFHC食負荷後に、肝臓を摘出し、組織切片を観察したところ、肝脂肪蓄積や肝線維化は、KOマウスで軽度であった。これと一致して、コラーゲン等の各種線維化マーカーは、KOマウスの肝臓で低値であった。 ④KOマウスで、NASH発症が抑制されるメカニズムを検討するために、体重差が認められないHFHC食負荷6週間の時点で、肝臓を摘出し、RNA-seqを行った。GO解析の結果、Pin1 KOマウスの肝臓では、PPAR経路や分子シャペロンの発現量が亢進していた。 ⑤293T細胞において、過剰発現系によるPin1とPPAR alphaの結合を検討したところ、両者の結合が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝細胞特異的Pin1 KOマウスがNASH発症に対して抵抗性を示すことを見出した。また、RNA-seqの結果から、Pin1欠損によりPPAR経路や分子シャペロンの発現亢進が、その抑制メカニズムに関与していると考えられたから。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-seqの結果を基に、Pin1とPPARa、分子シャペロンとの関係について進めていく。 特に、転写因子であるPPAR alpha, XBP1, ATF6等がPin1と結合するか、結合する場合、どのような機能制御をうけるかを中心に検討する。また、分子シャペロンを過剰発現させることで、肝脂肪蓄積や肝細胞死が影響を受けるかを検討する。
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Causes of Carryover |
Pin1 KOマウスがNASH発症に対して抵抗性を示すメカニズムの解析が予想より順調に進んだため、一部次年度に持ち越した。持ち越した分は、アデノ随伴ウイルスの作成等に使用し、より詳細なメカニズムの解明に努めたい。
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Research Products
(3 results)