2022 Fiscal Year Research-status Report
褐色脂肪細胞における多房性脂肪滴形態がエネルギー代謝に与える影響の解明
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22K08671
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田守 義和 神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (90379397)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 褐色脂肪細胞 / 脂肪滴形態 |
Outline of Annual Research Achievements |
主に褐色脂肪細胞に発現し多房性の細胞内脂肪滴形成に重要と予想されるFSP27βを欠損したマウスを作成し、エネルギー代謝からみた褐色脂肪細胞における多房性脂肪滴形態の意義の解明を目指している。2022年度に実施した研究結果は以下の4点である。 (1)普通食飼育による環境下では、褐色脂肪細胞が単房性となったFSP27β欠損マウスと野生型マウスの間では、15週齢までの体重に有意な差を認めなかった。摂餌量にも両者で有意な差を認めなかった。また腹腔内ブドウ糖投与による耐糖能試験を行ったところ、耐糖能は両者の間で有意な差を示さなかった。 (2)普通食飼育による環境下では、褐色脂肪細胞が単房性となったFSP27β欠損マウスと野生型マウスの間では、褐色脂肪細胞に特徴的な因子であるUCP-1、CideA、mtTFAのmRNA発現には有意な差を認めなかった。 (3)普通食飼育による環境下では、FSP27β欠損マウスと野生型マウスの間では、褐色脂肪組織、皮下脂肪組織、精巣上体脂肪組織のサイズや形態には有意な差を認めなかった。 (4)普通食飼育による環境下では、FSP27β欠損マウスと野生型マウスの間では、個体レベルの酸素消費に有意な差を認めなかった。しかし、FSP27β欠損マウスでは呼吸商が増加していた。また褐色脂肪組織から褐色脂肪細胞を単離して検討したところ、単離褐色脂肪細胞でもFSP27β欠損マウスでは単房性の脂肪滴蓄積を確認できた。この単離脂肪細胞を用いて酸素消費を検討したところFSP27β欠損マウスと野生型マウスの間では酸素消費量に有意差を認めなかった。 以上の事から、現時点では、褐色脂肪細胞における細胞内蓄積脂肪滴形態は、褐色脂肪細胞に特有の遺伝子発現や酸素消費に影響を与えないが、細胞内でのエネルギー基質を脂肪酸から糖質優位へと変換させる可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は大きなトラブルもないことからほぼ予定通り進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、褐色脂肪細胞内の多房性脂肪滴形態は細胞内のエネルギー基質の選択性に影響する可能性がある。つまり単房性脂肪滴は細胞内での脂肪酸の利用効率が低下し、このためエネルギー産生の基質を糖にシフトさせるのかもしれない。それを明らかにするため、単離した褐色脂肪細胞においてフラックスアナライザーを用いて、解糖系やミトコンドリアでの好気呼吸の状態を詳細に検討する予定である。同時にミトコンドリアのピルビン酸キャリア阻害薬やCPT1a阻害薬を使用し、単離褐色脂肪細胞のミトコンドリアにおける糖と脂肪酸の基質選択性を解析する予定である。 さらにFSP27β欠損マウスを高脂肪食で飼育することで糖代謝的に負荷をかけた場合、褐色脂肪細胞の脂肪滴形態の変化がエネルギー代謝にどういった影響を及ぼすのか検討を加えて行く。 同時に脂肪滴とミトコンドリアの相互関係や接合状態に変化があるかを、電子顕微鏡およびミトコンドリアを染色したイメージング解析、近接ライゲーションアッセイを用いて検討する予定である。
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Causes of Carryover |
R4年度は研究状況により残額が発生したが、R5年度の研究計画で執行予定である。
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Research Products
(3 results)