2022 Fiscal Year Research-status Report
視床下部炎症を誘導する自然免疫シグナル経路の解析:摂食調節異常機構の解明
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22K08685
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Research Institution | Toyama Prefectural Institute for Pharmaceutical Research |
Principal Investigator |
渡邉 康春 富山県薬事総合研究開発センター, その他部局等, 主任研究員 (80646307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今野 歩 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (40509048)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 炎症 / 肥満 / 視床下部 |
Outline of Annual Research Achievements |
視床下部の炎症反応が、摂食抑制ホルモンであるレプチンのシグナルを障害し、過食になることが肥満の原因の1つであることがわかってきた。我々は、核酸センサーのアダプター分子Stimulator of interferon genes(STING)が、Toll様受容体3(TLR3)やTLR4のアダプター分子TIR-domain-containing adapter-inducing interferon-beta (TRIF) を介して視床下部炎症を誘導し、レプチンシグナルを障害して過食性肥満の発症に深く関与することを見出している。R4年度は、STING-TRIF経路による視床下部炎症の責任細胞を同定するため、TRIFとSTINGの共発現細胞を解析した。 In situ hybridization法により、TRIFが視床下部のミクログリアとアストロサイト、オリゴデンドロサイトに発現し、神経細胞には発現していないことがわかった。また、フローサイトメトリー法および共焦点レーザー顕微鏡の解析により、STINGはミクログリアに選択的に発現していることがわかった。マウス新生児大脳から誘導したミクログリアのSTING遺伝子の発現は、アストロサイトよりも24倍高く、上記結果とも一致した。さらに、高脂肪食を12週間摂餌させたマウスの視床下部においても、STINGはミクログリアに選択的に発現していることが分かった。 以上から、STING-TRIF経路による視床下部炎症の責任細胞として、ミクログリアが最有力候補として考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視床下部におけるSTINGとTRIFの発現細胞を同定することができた。また、STING-TRIF経路を活性化する自然免疫センサーとしてcGAS(cyclic GMP-AMP synthase)を想定しているが、cGAS欠損マウスの解析も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
①視床下部炎症とレプチンシグナル障害にcGASが関与するのか? STING-TRIF上流の自然免疫センサーとしてcGASを想定している。そこで、cGASが高脂肪食摂餌による視床下部炎症と摂食調節異常に関与するのか明らかにする。cGAS欠損マウスに高脂肪食を摂餌させ、STINGやTRIF欠損マウスと同様に、野生型マウスより体重増加の軽減や摂餌量の減少を測定する。さらに、視床下部炎症が軽減し、レプチンシグナルの障害が改善するのか明らかにする。 ②ミクログリア特異的STING欠損マウスの作出法の検討 血液脳関門を高効率に透過できるウイルスベクター(AV-PHP.B)を用いて、STING欠損マウスの作出法を構築する。 ③STING-TRIFシグナルによる視床下部炎症と摂食調節異常機序の解明 視床下部炎症に重要なSTING-TRIFシグナルの下流分子を同定するため、野生型マウスおよび遺伝子欠損マウス(STING, TRIF)に普通食または高脂肪食を摂餌させ、視床下部のタンパク質ならびにリン酸化タンパク質を網羅的に解析する。
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Causes of Carryover |
cGAS欠損マウスの繁殖に時間がかり、十分な匹数が確保できず次年度使用額が生じた。次年度使用額は、cGAS欠損マウスの解析に使用する。
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Research Products
(1 results)