2022 Fiscal Year Research-status Report
新生児・乳児小腸オルガノイド人工小腸を用いた短腸症候群への新規移植治療法の開発
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22K08741
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
古賀 寛之 順天堂大学, 大学院医学研究科, 先任准教授 (30468574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山高 篤行 順天堂大学, 医学部, 教授 (40200703)
須田 一人 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60784725)
中村 哲也 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任教授 (70265809)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 短腸症候群 / ヒト小児腸管オルガノイド / 免疫不全マウス / 人工小腸 / Scaffold |
Outline of Annual Research Achievements |
小児期の多彩な腸疾患に起因する広範小腸切除により短腸症候群となる症例は、栄養吸収障害のほか中心静脈栄養依存による腸管不全合併肝障害のために致死的となりうる。近年、オルガノイド培養を用いた再生医療研究の中でも、細胞接着足場組織となるScaffoldと組み合わせて作成するtissue-engineered small intestine (TESI)への期待が集まっている。ヒト特に小児患者の小腸オルガノイドTESIを生体内へ移植させ腸管機能向上への作用を詳細に検討した報告はこれまでに乏しいことから、本研究では応募者が確立した小児小腸オルガノイド培養技術と新規にScaffold作成技術を基にTESIを作成し、短腸症候群マウスへ生着させて腸管機能向上への有効性を検証することを目的とする。 具体的に、本研究では①新生児・乳児小腸オルガノイドとScaffoldを用いたTESIの確立: (A) 新生児・乳児小腸オルガノイド作成と(B) Scaffoldを用いたTESI作成と組織学的評価、②マウス短腸症候群モデルへのTESI移植による生命予後改善作用の検討: (A) マウス短腸症候群モデル作成による生体反応解析と(B) TESIのマウス腸管への移植による腸管機能向上評価、に分けて計画を進行させる予定である。 本年度は、まず手術検体で得られた新生児・乳児小腸由来オルガノイド培養細胞を用いてScaffold上での培養を導入し、TESIの確立を図った。さらに並行して免疫不全マウス (NSG: NOD-scid IL2r γnull)を用いて、以前に行ったトライツ靭帯から6cm肛門側~回盲部 より6cm口側の部位で腸管を切除・再吻合して全小腸の60%長を切除する短腸症候群モデル作成に取り掛かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、まず手術検体で得られた新生児・乳児小腸由来オルガノイドの培養を行った後にScaffoldを併せ用いたTESIの確立を図った。Scaffold利用の導入については既報に沿って、4mm 径・4mm 長の円筒状生分解性ポリマーを基に作られた Scaffoldを、準備した細胞 1x106個分の新生児・乳児小腸オルガノイドで充填し、NSGマウスの大網へ縫着して 4 週間培養する方法を基点として進めた。しかし、NSGマウスの大網縫着部位を4週間の培養充填ののちに採取しても有効なTESI作成が得られず難渋した。 並行して、NSGマウスを用いて以前に作成したトライツ靭帯から6cm肛門側~回盲部 より6cm口側の部位で腸管を切除・再吻合して全小腸の60%長を切除するモデル作成に取り掛かったが、マウス種の違いのためか当初、予想以上に術後の死亡率が高かったため実験の進行が遅れた。結果的に、抗生剤をAmpicillinからMeropenemへ広域なタイプに変更することである程度克服しえた。 まだ安定したTESI作成が確立されておらず、それらの短腸症候群マウスへの移植実験実験にとりかかれていないため、進捗状況区分としては「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の円滑な進みのために、2022年度に行ってきた実験系を修正する。すなわち、円筒状生分解性ポリマーのサイズをさらに大きくし容積を稼ぎ、さらに充填のために準備するオルガノイド細胞の量を1x107個分に増やすなどの条件検討を行う。 TESI作成を安定して行うことができたら、当初の予定どおり組織解析を行って空腸・回腸どちらを用いたオルガノイド細胞由来のTESIなのかによって生じる差異を観察する。具体的に、腸上皮特性の評価: 絨毛高・陰窩深度・杯細胞・パネート細胞・神経内分泌細胞・Na+/H+交換輸送体アイソフォーム・水チャネル分子をHE染色による形態評価およびアルシアンブルー染色、各分子特異的マーカーの免疫染色にて、細胞数や分布を解析する。続いて、NSGマウスで短腸症候群モデルを作成した個体に対してのTESI移植実験を進めていく。 また、今後もscaffoldを用いた組織培養方法の確立が難渋してしまう場合、組織から細胞成分のみを除去して組織自体の構造や細胞周囲成分を保持した臓器の型を取得可能な脱細胞化技術を国外留学で会得してきた当講座のスタッフが本研究計画のメンバーとして迎え入れられたことから、TESIの作成方法を大きく変更することも検討する。
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Causes of Carryover |
本研究計画のための使用額を他助成金から捻出できたことと、実験が十分に進まなかったことから本年度の使用額が最小限となった。来年度には有効に使用する予定である。
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