2022 Fiscal Year Research-status Report
がんーストローマ代謝物クロストークによる膵癌進展メカニズムの解明
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22K08756
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
北村 文優 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (90897068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石本 崇胤 熊本大学, 病院, 特任准教授 (00594889)
安田 忠仁 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (00867947)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 膵癌 / 代謝リモデリング / LDHA / 乳酸 / CAFs |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞における代謝は、正常細胞とは異なることが知られており、癌細胞はその代謝経路を自ら有利になるようにリモデリングしている。特に難治性消化器癌である膵癌は乏血性腫瘍として知られており、特徴的な代謝リモデリング機構を有することが知られている。 一方、これまで、固形癌の腫瘍微小環境をテーマとした研究が世界中で活発に行われており、その研究成果から、新公安の腫瘍乾漆に存在する線維芽細胞(CAFs)が腫瘍進展・治療抵抗性を促進することは明らかである。がんを多彩な細胞群によって構成される組織としてとらえ、その代謝機構を解明することでより効果的な新規治療ターゲットを開発することにつながると考えられる。 本研究では、膵癌において解糖系に関与するL-lactate dehydrogenase A chain(LDHA)高発現症例が予後不良であり、LDHA高発現膵癌はより多くの乳酸を産生することを明らかにした。産生された乳酸は腫瘍微小環境中に存在するCAFsへ作用し、CAFsの増殖を促すとともに、CAFs由来のIL6の産生を増加させた。さらに膵癌細胞の産生する乳酸とCAFsが産生するIL6により腫瘍微小環境中に存在する免疫細胞の活性を低下させ、腫瘍の増殖・進展を阻害する可能性を示した。これらの研究で得られた結果を総合すると、今後の膵癌に対する個別化医療の発展や、新たな予後予測因子の創出につながり、臨床的意義は大きいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・ 膵癌におけるLDHA発現の意義の解明 膵癌切除検体を用いてLDHAの免疫染色を行い、LDHA高発現群は予後不良であることを見出した。また、膵癌細胞のLDHAをKDし細胞増殖を検討したが、増殖の抑制は認められなかった。一方で、LDHAをKDすることで膵癌の乳酸産生が有意に低下した。 ・ 膵癌の産生する乳酸のCAFsに対する影響の解明 in vitroにおいて膵癌細胞より樹立したCAFsに乳酸を付加することで、CAFsの増殖が促進された。また乳酸刺激をうけたCAFsはRNAシーケンシングにおいてIL6の産生が増加した。 ・ 微小環境中に増加した乳酸とIL6の免疫細胞への影響の解明 ヒト血清より免疫細胞を分離し、in vitroにおいて乳酸とIL6を付加をおこなったところ、相乗的にT細胞のGraBやINFγ活性を低下させることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivoにおけるマウスモデルの検証 マウス膵癌細胞株を用いて、細胞株のLDHAのKDを行い、マウスの膵臓・皮下へ移植を行い、腫瘍の増殖や免疫細胞への影響の検討を行う。またLDHA阻害剤であるFX11を用いて腫瘍への治療効果判定を行い、FX11における治療効果判定を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していた旅費と人件費の使用がなかったため。次年度に合算して使用できる見込み。
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