2023 Fiscal Year Research-status Report
食道癌におけるFn14発現と治療抵抗性・悪性度との関連について
Project/Area Number |
22K08771
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安達 慧 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (70850262)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 公太郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (20747159)
山本 和義 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70528637)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | Fn14 / TWEAK / がん悪液質 / 食道扁平上皮癌 / 化学療法抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん悪液質は腫瘍から放出されるサイトカインによる筋肉・脂肪分解、食思不振等によって体重減少をきたす病態であり、担がん患者が6か月以内に5%以上の体 重減少を認める状態と定義されている。腫瘍由来の炎症性サイトカインが骨格筋組織および脂肪組織との相互作用の下、がん悪液質とその諸徴候を引き起こしていると考えられており、化学療法などの奏効率や治療完遂率を低減させるのみならず、有害事象を増加させ、生存期間を短縮する因子とされている。 食道扁平上皮癌治療において高率に伴うがん悪液質が術前補助化学療法の有害事象増加・奏効率低下・忍容性の低下・術後合併症の増加・術後生存期間短縮・術後QOL低下の原因となっている可能性がある。悪液質に対する治療薬としてグレリン受容体作動薬が食欲亢進、異化抑制作用により除脂肪体重の改善が報告されているが、化学療法治療効果や予後に対する改善効果はなく、がん悪液質の根本的な解決にはなっていない。現在、有効ながん悪液質への治療介入の確立が求められている。近年、がん悪液質関連タンパクとしてTWEAK/Fn14が報告されている。TWEAKは多機能性サイトカインであり、腫瘍側の受容体であるFn14とともに、がん悪液質の症状である骨格筋減少に関連していることが報告されている。また、主にNF-κβ/AKT/MAPKシグナル伝達系を活性化させることにより発癌過程・増殖・浸潤・転移と関連している可能性がある。しかしながら、悪性腫瘍におけるTWEAK/Fn14発現の臨床的意義や、がん悪液質および治療抵抗性との関連については未だ明らかにされていない。本研究では、がん悪液質を伴うことが多い食道癌を対象にTWEAK/Fn14発現と化学療法治療効果・予後との関連を明らかにし、TWEAK/Fn14をターゲットとした治療介入の可能性について模索することを目的とする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TWEAK/Fn14 axisと治療抵抗性との関連について、in vitroで食道扁平上皮癌細胞株におけるFn14のノックダウン・強制発現を行い、Fn14発現と腫瘍増殖能・遊 走能・化学療法抵抗性(DTX, CDDP, 5-FU)との関連を認め、下流のシグナル発現との関連も認めた。さらに、in vivoにおいてFn14を強制発現させた食道扁平上皮 癌細胞株をヌードマウスに投与し、腫瘍増殖能・化学療法抵抗性(CDDP)が増悪していることを確認した。同様に、Fn14を発現している食道扁平上皮癌細胞株に抗 Fn14抗体を投与し、腫瘍増殖能・化学療法抵抗性の改善を認めた。 食道癌患者の臨床検体を用いて、腫瘍におけるFn14,TWEAK発現について免疫組織染色にて確認し、Fn14,TWEAK発現と化学療法奏効率低下、予後(全生存期間、無再発生存期間)不良との関連を認めた。 さらに、TWEAK/Fn14 axisと筋萎縮との関連について、ヒト骨格筋細胞株を用いてin vitroにて検証を行った。食道扁平上皮癌細胞株(Fn14強制発現・ノックダウン)と共培養を行い、Fn14発現が筋萎縮(MyHcf)と関連していることを示した。さらに培養上清にTWEAKを添加することでも筋萎縮が促進されることを明らかにした。また、in vivoにて食道扁平上皮癌細胞株(Fn14強制発現)を用いて、Fn14発現と筋萎縮との関連について確認する。 さらに、Fn14とTWEAKの相互作用を含めた関係性についてはまだ詳細が解明されていないため、今後in vitroにて解明を進めていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
in vivoにおいてFn14を強制発現させた食道扁平上皮癌細胞株やITEM-4(抗Fn14抗体)を用いて、Fn14発現と筋萎縮との関連について確認する。 さらに、Fn14とTWEAKの相互作用を含めた関係性についてはまだ詳細が解明されていないため、今後in vitroにて解明を進めていく。
|
Causes of Carryover |
抗体薬などの消費が抑えられたため、予定よりやや少ない金額となりました。 来年度は余剰の金額分を使用できるように、更に研究の幅を広げていきたいと思っております。
|