2023 Fiscal Year Research-status Report
膵癌術前治療耐性克服を目指したcollagen XVIIを標的とする新規治療開発
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22K08816
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水間 正道 東北大学, 大学病院, 講師 (80578675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 啓子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (60294972)
舟山 亮 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20452295)
青木 修一 東北大学, 大学病院, 助教 (30844451)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | collagen XⅦ / COL17A1 / 膵癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は外科的切除が根治を期待できる唯一の治療法であるが、切除後の再発率は高く、その制御が課題であった。近年、術前補助化学療法 (NAT: neoadjuvant therapy)後の切除が標準治療となったが、NATに治療耐性を認める症例は早期再発をもたらし予後は不良である。NAT後の膵癌切除サンプルを用いた網羅的RNA解析により、NAT耐性の膵癌組織にhemidesmosome assemblyの亢進とCOL17A1の高発現を認めたことから、本研究では、細胞接着因子hemidesmosomeの構成成分であるcollagen type XⅦ (遺伝子名:COL17A1)に着目し、「COL17A1の発現を介した膵癌の転移増殖機構の解明や抗癌剤耐性との関連を明らかにする」ことを目的とした。 結果1)NCBIに公開されているsingle cell RNA sequencingデータを解析すると、ヒト膵癌組織においてCOL17A1は癌細胞特異的に発現しており、間質細胞には発現していないことがわかった。マウス膵癌細胞株(KPC及びAK4.4)にCOL17A1を過剰発現すると、in vitroでは細胞増殖能に影響を与えなかったが、マウス同種移植モデルにおいてKPCでは腫瘍形成を有意に促進させ、AK4.4では著明に抑制した。in vivoの腫瘍微小環境がCOL17A1の腫瘍形成制御に影響していることが示唆された。 結果2)マウス腫瘍組織のRNA-sequencing解析を行うと、COL17A1を過剰発現したKPC-COL17A1腫瘍では細胞増殖に関する遺伝子(Fgf1,Kitl)の発現が上昇しており、AK4.4-COL17A1腫瘍では免疫系路(Cxcr3/Cxcl10,Ncr1)やWntシグナル経路、Hippoシグナル経路が濃縮されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス膵癌細胞株に対し遺伝子編集技術を用いて、COL17A1の過剰発現株の作成に成功し、in vitroの実験を行なった。さらにマウス同種移植モデルを作成し、腫瘍サンプルを用いた網羅的発現解析を行なった。2種類の膵癌細胞株において、in vitroでは、COL17A1の発現による有意な現象の差を認めなかったが、in vivoにおいては、腫瘍形成において全く逆の結果を認めた。Col17a1の発現は遺伝子発現プロファイルにおいて全く異なる影響を与え、腫瘍微小環境における間質や免疫細胞との相互作用が腫瘍形成の違いをもたらしたと考えられる。これらの結果は、膵癌におけるCOL17A1発現の関与という点において新規性があり、論文発表及び学会発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果として、COL17A1の発現量の制御により腫瘍増殖において異なる結果を示した。同一分子が異なる発現変化を起こす機序を、分子生物学的側面から解明することができ、新たな知見をもたらした。今後は、COL17A1の発現量の制御が腫瘍増殖だけでなく薬剤耐性にどのように関与しているかを明らかにする必要がある。膵癌における抗がん剤のKey drugはgemcitabineであり、gemcitabine耐性株の作成によるCOL17A1の発現変化を検討することを考えている。さらにCOL17A1過剰発現株を用いたマウスモデルにおいてgemcitabine投与による腫瘍増殖の変化を検討し、薬剤耐性にCOL17A1の発現がどのように関与しているかを検討する予定である。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね順調に進展しており、想定よりも少ない使用額で済んだため次年度使用額が生じた。この次年度使用額は翌年度の助成金と合わせて、実験に用いる物品の購入費などに使用する計画である。
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[Presentation] Collagen XVIIはCXCL10/CXCR3の免疫応答経路を介して膵癌腫瘍形成を抑制する2023
Author(s)
柏木 良介, 舟山 亮, 青木 修一, 平野 直大, 安藤 未佳, 井上 亨悦, 伊関 雅裕, 三浦 孝之, 石田 晶玄, 大塚 英郎, 水間 正道, 中川 圭, 森川 孝則, 亀井 尚, 海野 倫明, 中山 啓子
Organizer
第123回日本外科学会定期学術集会