2023 Fiscal Year Research-status Report
肝臓癌PDXモデルのリン酸化プロテオーム解析による革新的分子治療標的薬の同定
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22K08844
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
森 治樹 滋賀医科大学, 医学部, 特任助教 (40803945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 歩 愛知県がんセンター(研究所), 分子診断TR分野, 分野長 (50817567)
谷 眞至 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60236677)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 肝臓癌 / プロテオミクス解析 / PDXマウスモデル / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞癌は再発率が高い予後不良な固形癌であり、ゲノム解析技術の目覚ましい発展にもかかわらず、切除不能進行・再発肝細胞癌に対する分子標的治療の貢献は限定的である。 本研究では、外科手術検体から肝癌患者腫瘍組織移植(patient-derived xenograft; PDX)モデルを確立し、その多層オミクス解析から同定される肝癌特異的に活性化されたシグナル経路に基づいて、革新的な肝癌治療法の開発を目指している。現在までに7例の肝癌PDXモデルと1例の患者由来細胞(Patient derived cells; PDC)を作成し、それぞれゲノム、トランスクリプトーム、リン酸化プロテオームを含む空間プロテオーム解析を行っている。また、NASH由来肝癌を非常によく再現する、高脂肪食付加MC4R欠損マウスの組織トランスクリプトーム・プロテオーム解析から、代謝負荷環境下におかれた肝癌細胞に特徴的なシグナル依存性を抽出した。このシグナル経路はヒトNASH由来肝癌における新規治療標的となりうると考えられ、現在ヒト肝癌細胞株を用いてその分子メカニズムの解明を進めている。また、同マウスから樹立した細胞株はマルチキナーゼ阻害剤レンバチニブに耐性であったことから、CRISPR-Cas9システムを用いたゲノムワイド機能スクリーニングを行い、レンバチニブに合成致死を示す遺伝子を同定した。さらにその下流ターゲットとして、核酸代謝に関与する分子を同定し、この分子に対する阻害剤とレンバチニブが合成致死を示すことを見出した。ドラッグリポジショニングによる創薬につながることが期待され、現在詳細な機能解析に加えてin vivoでの検証を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、7例の肝癌PDXモデルと1例のPDCを作成した。肝癌PDXモデルの作成効率は約11%で、先行報告とほぼ同程度である。現在各PDX腫瘍において、ゲノム、トランスクリプトーム、リン酸化プロテオームを含む空間プロテオーム解析を行い、他癌種PDX腫瘍や正常肝組織の多層オミクスデータとの比較から、肝癌分子シグネチャの同定を進めている。また、高脂肪食付加MC4R欠損マウスの組織トランスクリプトーム・プロテオーム解析から、代謝負荷環境下におかれた肝癌細胞に特徴的なシグナル依存性を抽出した。このシグナル経路はヒトNASH由来肝癌における新規治療標的となりうると考えられた。さらに、マウス肝癌細胞株において、CRISPR-Cas9システムを用いたゲノムワイド機能スクリーニングにより、レンバチニブに合成致死を示す遺伝子を同定した。その下流ターゲットとして同定した核酸代謝に関与する分子に対する阻害剤とレンバチニブが合成致死を示すことを見出し、ドラッグリポジショニングによる創薬につながることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに同定した新規治療標的分子については、制御機構や作用機序など分子メカニズムの解明を行うとともに、肝癌組織における発現を検討する。さらに、肝癌PDXモデルやPDCの多層オミクスデータ、MC4R欠損マウスの肝癌組織・細胞株の多層オミクスデータに公開データベースを加えて、統合的かつ俯瞰的に肝癌を特徴づけるシグナル経路を同定し、革新的な肝癌治療標的を探索する。
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Causes of Carryover |
当該研究での使用予定金額で余剰が出たため、次年度における詳細な機能解析およびin vivoでの検証に使用するため。
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