2022 Fiscal Year Research-status Report
急性大動脈解離の解離腔補強のためのマイクロニードルを有する人工中膜の開発
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22K08924
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
西村 好晴 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70254539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 篤 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (50458072)
加藤 暢宏 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (60309268)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 人工中膜 / 両方向性マイクロニードルシートドルシート / 急性大動脈解離 |
Outline of Annual Research Achievements |
【はじめに】Stanford A型急性大動脈解離(ATAAD)の手術に際して解離腔の補強は重要である。現在用いているバイオグルーは有効であるが組織毒性の問題があり、フィブリン糊は即時的接着力が弱い。我々は両方向性にマイクロニードルを有する非生物由来の生分解性材料シートを人工中膜として解離腔に挿入し、解離腔の補強に応用できないかと考えている。【方法】ポリ乳酸を素材としメッシュ状のシートを3Dプリンターで作成する。マイクロニードルの雄型、雌型を形成し、メッシュ状シートを合わせて熱プレスにより表裏両方向性マイクロニードルシートを作成する。ブタ胸部大動脈組織片を用いて大動脈壁を用手的に剥離し、内膜側と外膜側の間に2cm大の人工中膜(ニードルの高さ:上方向950㎛、下方向500㎛、シートの厚み:260㎛)を挟み、フィブリン糊単独(F群)と人工中膜+フィブリン糊(MN群)の2群で牽引力を比較した。牽引力の測定にはデジタルフォースゲージを用いた。長軸方向と半径方向でそれぞれ牽引実験を行った。【結果】長軸方向の牽引力(n=5)はF群1.5±0.6N、MN群3.7±0.7Nで、MN群で有意に高値であった。半径方向の牽引力(n=6)はF群0.9±0.5N、MN群1.5±0.3Nで、MN群で有意に高値であった。さらに、ブタを用いて体外循環下に下行大動脈を遮断し、横切開を行い、部分的に大動脈解離を作成した。そこに人工中膜を挿入し、縫合を行う実験を行った。針の運針には問題を認めなかった。【まとめ】我々が新たに開発した人工中膜は解離腔の接着力を増強することが示唆された。人工中膜は急性期の接着力増強以外に、慢性期においてのマイクロニードルの生体吸収によるコラーゲン架橋によりより強固な解離空の閉鎖が期待されるのではないかと考えており、今後、人工中膜の至適形状の検討と慢性期の組織学的評価が必要と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニードルの高さをより高くした人工中膜の試作に成功し、接着力の増強効果も確認できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらなる接着力の増強を期待し、マイクロニードルの形状を変化させることを検討している。その試作品ができれば接着力の増強効果を確認する。また、今後の課題として、より臨床に近づけるために、大型動物で大動脈解離を作成し、人工中膜で補強する手術を行い、1か月程度飼育し、解離腔補強の効果を組織学的に検討できないかと考えている。
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Causes of Carryover |
人工中膜の形状を変えるために必要な機材を購入したため。
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