2023 Fiscal Year Research-status Report
大動脈解離病態の統合的理解を目指して:細胞老化と液性免疫の役割
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22K08968
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
中尾 英智 久留米大学, 医学部, 助教 (80869545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 浩樹 久留米大学, 付置研究所, 教授 (60322244)
田山 栄基 久留米大学, 医学部, 教授 (90281542)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大動脈解離 / 細胞老化 / 炎症応答 / マクロファージ / 平滑筋細胞 / 細胞増殖応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らはマウス大動脈解離モデルにおいて、解離に先立って細胞増殖応答および炎症応答が起こっていること、炎症応答が解離増悪に寄与していることを見出した。そして申請者はその細胞増殖応答、炎症応答、解離病態とを結びつけるものが「細胞老化」である可能性に着目し、研究を進めてきた。 マウス解離モデルにおいて老化細胞、老化マーカーが発現していたことから、細胞老化が解離病態に関与していると考えら得た。また、同モデルにおいて老化細胞除去(ABT263)を投与すると解離増悪の抑制、解離による死亡率の低下が示されたことから、老化細胞は解離増悪に寄与することが示唆された。 さらに解離増悪メカニズムの解明のため、解離発症前の遺伝子発現解析を行うと、老化細胞除去薬により炎症および免疫応答に関連する遺伝子群が抑制されていることが明らかとなった。 解離病態における炎症応答に関連するIL-6、IL-1β、TNF等の炎症マーカーの遺伝子発現がABT263により抑制されており、また解離増悪に関与する破壊型マクロファージの細胞マーカーの遺伝子発現も同様にABT263により抑制されていた。 そして、大動脈のメジャーコンポーネントである平滑筋細胞のフェノタイプ変化に対して、細胞老化が及ぼす影響についても検証した。本来大動脈の平滑筋は定常状態では収縮型を維持し、炎症刺激等により平滑筋フェノタイプは合成型へ分化が促進される。解離モデルのタンパク発現を見たところ、解離刺激により合成型マーカーの割合が増加したのに対し、ABT263投与により収縮型マーカーの割合が増加していた。このことはABT263が平滑筋細胞の収縮型維持に寄与していることが示唆された。 以上より、マウス解離モデルにおける細胞老化が解離増悪を来たす機序として、炎症応答、破壊型マクロファージへの分化、平滑筋のフェノタイプチェンジなどが複合的に関与していると推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス解離大動脈において老化マーカーおよび老化細胞が存在すること、加えてその細胞種(内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、マクロファージ)の同定に至った。また、同モデルへの老化細胞除去薬(ABT263)投与により解離が抑制されたことから、老化細胞が解離増悪に寄与することを見出した。 さらに、解離大動脈を用いた遺伝子発現解析にてABT263により抑制された遺伝子群として炎症応答および免疫応答に着目し、病態解明のメカニズムの解明を進めた。結果、解離病態においてABT263が炎症応答の抑制、解離増悪に関与する破壊型マクロファージの分化の抑制、さらには大動脈平滑筋細胞の収縮型フェノタイプ保持など様々な機序を介して解離抑制に結びつく可能性を発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの既報として、マウス解離病態においてmTORを介した細胞増殖応答が起きており、さらにmTOR阻害薬であるラパマイシンを投与すると細胞増殖が抑制され、解離増悪も抑えられることがわかっている。 申請者は解離病態における細胞老化がmTORを介した細胞増殖応答により生じていることを明らかにするために、ラパマイシンを投与し、老化細胞や老化マーカーの発現に影響を及ぼすかを観察することとしている。 また、マウス解離モデルにおいてABT263により破壊型マクロファージへの分化が抑制され、平滑筋細胞の収縮型の保持が見られたことから、培養細胞系においても同様の挙動が見られるかを検証していく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は以前より採取していたvivoサンプルを用いた研究がメインであったこともあり、次年度使用額が生じた。 次年度使用額はvitroサンプルを用いた研究に際しての物品購入等に充てるほか、血液サンプルを用いた実験も視野に研究を進めている。
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Research Products
(6 results)