2023 Fiscal Year Research-status Report
NGSを用いたKRAS変異陽性肺癌の耐性獲得機序の解明と併用療法の開発
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22K08975
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮田 義浩 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (50397965)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 肺癌 / KRAS G12C変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺腺癌では特定のドライバー遺伝子変異・転座を標的とした分子標的薬は極めて有効だが、耐性獲得が大きな課題である。KRAS変異は肺腺癌のみならず扁平上皮 癌においても高い陽性率が報告され、最近開発された新規分子標的薬の臨床応用が期待されているが、その耐性機序についての報告は未だ少ない。本研究では KRAS変異陽性肺癌細胞をKRAS阻害剤と短期間培養し、1) KRAS自体の微量な耐性変異に絞って深く解析するNGS、2) 特定の遺伝子シグナルの増強を網羅的に解析 するNGSを2通り使い分けて、耐性メカニズム解明を目指す。 我々はまず当科で切除された腺癌(877例)、扁平上皮癌(113例)についてKRAS G12C変異の頻度をddPCRを用いて解析した。KRAS G12C変異は喫煙者、IASLC grade 3、リンパ血管浸潤陽性症例に高頻度で、再発頻度も高かった。 KRAS変異を有する肺腺癌と扁平上皮癌の複数の細胞株、腺癌 (H23, HOP62), 扁平上皮癌 (Calu-1)に、KRAS阻害剤(AMG-510, MRTX849, ARS-1620)を加え2週間 培養した後に細胞を回収し、NGSで下流の遺伝子のシグナル発現増強について解析した。KRAS inhibior投与でmTORのmRNA発現増強を認め、Western Blottingを用 いてその再現性を確認した。肺腺癌と扁平上皮癌の細胞株を用いてKRAS阻害剤とmTOR阻害剤を併用投与したところ、MTS assay と Colony forming assayで相乗的な細胞増殖抑制効果を肺腺癌と扁平上皮癌の両方で認めた。更に併用投与によりpAKT, pERKなどのシグナル発現低下を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はまず当科で切除された腺癌(877例)、扁平上皮癌(113例)についてKRAS G12C変異の頻度をddPCRを用いて解析した。KRAS G12C変異頻度は腺癌で2.9% (25/877) 、 扁平上皮癌で1.8% (2/113)であり、その変異頻度は両組織型で有意差を認めず、扁平上皮癌においてもKRAS阻害剤も有効性が期待される結果であっ た。扁平上皮癌での分子標的薬の可能性を示した報告は少なく、大きな進捗と考える。 またKRAS変異を有する肺腺癌と扁平上皮癌の複数の細胞株、腺癌 (H23, HOP62), 扁平上皮癌 (Calu-1)に、KRAS阻害剤(AMG-510, MRTX849, ARS-1620)を加え2 週間培養した後に細胞を回収し、NGSで下流の遺伝子のシグナル発現増強について解析した。KRAS inhibior投与でmTORのmRNA発現増強を認めた。肺腺癌と扁平上皮癌の細胞株を用いてKRAS阻害剤とmTOR阻害剤を併用投与したところ、相乗的な細胞増殖抑制効果を肺腺癌と扁平上皮癌の両方で認めた。この結果も特に扁平上皮癌の分子標的治療の新しい方向性を細胞実験の結果より示している。KRAS阻害剤とmTOR阻害剤 併用についてはほとんど報告がなく、新規知見である。さらにpAKT, pERKなどのシグナル発現低下がその作用機序のメカニズムの一つであることを解明した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のごとく現時点で実験の進捗は順調である。今後はKRAS阻害剤とmTOR阻害剤を併用投与効果の機序解析をさらに進めていく方針である。
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Causes of Carryover |
当初、試薬等の実験に使用する物品を購入する予定であったが、次年度に使用することになり購入しなかった為。 次年度では試薬や培地等の研究に関する実験用品を購入する予定である。
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