2022 Fiscal Year Research-status Report
エラスターゼ誘導性肺気腫モデルにおける骨髄由来VEGFR1陽性細胞の役割
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22K09010
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
松井 啓夫 北里大学, 医学部, 助教 (00365123)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江島 耕二 北里大学, 理学部, 教授 (30327324)
天野 英樹 北里大学, 医学部, 教授 (60296481)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エラスターゼ / 肺気腫 / VEGFR1 / SDF-1 / CXCR4 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は肺気腫モデルの作製及びVEGFR1-TKシグナルが肺気腫形成の過程に関与しているか否か検討するため、以下に記す1-2を施行した。1. エラスターゼ誘導性肺気腫症モデルの作製:野生型マウス(WT)及びVEGFR1-TK欠損マウス(VEGFR1-TKKO)にエラスターゼ (1mg/ml)を経気管的に散布(50マイクロリットル)し肺気腫モデルを作製した。2. 肺の気腫化の評価は以下に記す(A-Cを実施した)。 A.肺の機能的評価:WT及びVEGFR1-TKKOで肺気腫モデルを作製し、21日目に Flexiventを使用して肺の膨らみやすさ(コンプライアンス)と肺の弾性と縮みやすさ(エラスタンス)の評価を行なった。WTはVEGFR1-TKKOと比較し、有意にコンプライアンスの増大を認めた。また反対に、VEGFR1-TKKOと比較し、エラスタンスの低下を認めた。B.肺胞間距離の測定:摘出肺をヘマトキシリンエオジン染色(HE染色)にて肺胞間距離を測定し定量した。WTはVEGFR-1TKKOと比較し、有意に肺胞間距離の開大を認めた。C.肺組織でのVEGF、SDF-1のmRNA発現効果の検討:WT及びVEGFR1-TKKOでモデルを作製後、経時的に定量的PCRを用いて肺組織中のVEGF及びSDF-1発現の測定を行なった。肺組織のSDF-1の発現は14,21日目でVEGFR-1TKKOと比較しWTで有意に増強を認めた。またCXCR4の発現は21日目でVEGFR-1TKKOと比較しWTで有意に増強を認めた。以上の結果より、エラスターゼ誘導性肺気腫症モデルにおいてVEGFR-1TKシグナルが肺気腫の形成に深く関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験は新型コロナウイルス感染症の影響で研究に割く時間が少なくなったものの順調に進行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、肺気腫形成に関与する炎症性mediatorの発現がVEGFR1-TKシグナルに依存しているか否かについて検討する。WT及びVEGFR1-TKKOを用いて①末梢血液及び肺胞壁組織でのVEGFR1+細胞の発現の違い②VEGFR1+細胞動員に関与するSCFやMMP-9の発現の違い③肺気腫の形成における炎症性mediatorの発現の違いの3つを検討することにした。 1. 末梢血液及び肺組織でのVEGFR1+細胞の発現の検討 :末梢血液中のVEGFR1+細胞の発現はフローサイトメトリーを用いて確認する。また、肺組織に集積したVEGFR1+細胞は免疫組織化学を用いて確認する。2.SCF及びMMP-9の発現効果の検討:末梢血液中のSCF及び骨髄組織中のMMP-9の前駆体であるpro-MMP-9濃度を経時的にELISA kitを用いて測定する。3. 肺組織での肺気腫関連の炎症性mediatorの発現の検討:WT及びVEGFR1-TKKOでモデル作製後、経時的に肺気腫関連の炎症性mediator (TNF-α、好中球エラスターゼ、MMP-9、MMP-12、MCP-1、SDF-1、CXCR4)のmRNA発現量を測定する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、研究に割く時間が短縮された。具体的に以下に記します。 1. 新型コロナウイルス感染症に罹患した入院患者の診療を行なっていた為に、感染予防の一環で診察する日は研究を控えた。2. 研究室の3密を避けるために極力、研究室に人があまりいない時間帯を狙って計画的に研究を行なったために研究に割く時間が少なくなった。 上記の理由のため、次年度使用額が生じてしまった。次年度は法人の感染対策の規制が緩んだことにより、研究時間を多く割くことが期待できることから、上記推進方策の遂行に必要なフローサイトメトリー試薬、ELISA Kit、遺伝子解析試薬等に使用する予定である。
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