2022 Fiscal Year Research-status Report
皮膚分節の温湿度測定により区域麻酔の麻酔範囲を推定する方法の開発
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22K09031
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
丸山 晃一 帝京大学, 医学部, 教授 (80267210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 富男 帝京大学, 医学部, 教授 (00193110)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脊髄クモ膜下麻酔 / 交感神経 / 発汗 / 湿度センサー / 皮膚温 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、脊髄クモ膜下麻酔時の無痛域における、交感神経ブロックによる皮膚発汗の低下と皮膚温上昇を検出するための、皮膚近傍温度・湿度測定用試作機の作成と改良を行った。すなわち、温湿度センサーを内蔵するカプセル様のセンサーマウントとデータ取得・記録のための周辺機器を作成し、ボランティアで体幹と手掌の皮膚近傍相対湿度を計測した。 その結果、体幹の発汗は手掌などと比べて少ないため、体幹の皮膚近傍湿度は手術室室内の湿度を上回らない場合もあることが分かった。その場合は、予め存在するセンサーマウント内の室内空気が換気されないと皮膚からの発汗による湿度やその変化を測定できないと考えられる。そこで、過去の論文なども参考にして、センサーマウント内の湿度センサーの上層に通気口を備えた隔壁を設置し、その上にシリカゲル層を設けた。これにより、発汗により蒸発してくる水はシリカゲルに吸着されるため、皮膚表層からセンサーマウント内を上層に向かって気流が発生し、発汗による湿度変化を低値でも経時的に測定できると考えられる。この推定を検証するため、ボランティアに暗算を行わせたときの交感神経緊張による手掌発汗の増加に伴う手掌の皮膚近傍相対湿度増加を確認できた。また、下肢の屈伸運動負荷による体幹発汗の増加に伴う体幹の皮膚近傍相対湿度の増加を確認した。皮膚近傍相対湿度はシリカゲル層の量および皮膚表層からの距離によって大きく影響されることを認めたため、これらの因子を増減させ、適正な量と距離を検討した。また、温度、湿度センサーの皮膚表層からの距離についても検討し、さらに計測値データを取得、保存、グラフ化するためのハードとソフトを主に自作により作成した。これらの測定により作成した機器の安全性についても確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初はセンサーマウント内のシリカゲルの使用は想定していなかったが、研究実績の概要に記載したように、その使用が必要となった。シリカゲルの量が多い、あるいは皮膚表層との距離が近い場合には、測定される皮膚近傍相対湿度が大きく低下してしまう。すなわち、シリカゲルの効果が強いと皮膚表層水分を急速に奪うため、気流量が増し、皮膚近傍の相対湿度は低下すると考えられる。特に、体幹においては皮膚近傍の湿度が手掌より低いため、シリカゲルの効果が大きくならないように調整する必要がある。このシリカゲルの使用量と皮膚表層からの距離について、適正条件を決定するのに予想以上の時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、体幹の皮膚近傍相対湿度は手掌に比べて低値であることを認めた。脊髄クモ膜下麻酔の無痛域では発汗減少により皮膚近傍湿度はより低下する方向に変化すると考えられる。したがって、交感神経遮断による皮膚近傍相対湿度の変化は、体幹では手掌に比べて小さい可能性が高いと推定する。開発中の皮膚近傍の温湿度測定機器では、このような体幹での変化を充分検出できない恐れがある。この点を補足するため、以下の2種類の検証を追加して行う必要があると考えている。このために下記の予備的臨床研究実施の準備を行っている。倫理委員会の許可の申請はすでに行い、了承を得ている。 ①別の計測機器による体幹での発汗減少の測定:経皮水分蒸散量(Trans-epidermal water loss, TEWL)を測定するTewameter TM Hex(Courage+Khazaka社製)、静電容量法により角質の水分量を測定するCorneometer CM825(Courage+Khazaka社製)が市販されており、皮膚水分量の測定に応用されている。脊髄クモ膜下麻酔の無痛域において、自作の皮膚近傍温湿度測定機器と同時にこれらの機器による測定を行い、発汗量の低下の検出にどの機器が優れているかを、予備的臨床研究で検証する。本格的臨床研究では最も検出能の高い機器を使用することを考えている。②全身麻酔の導入、覚醒による手掌発汗の変化の測定:脊髄クモ膜下麻酔時の体幹での発汗減少に比べて、全身麻酔の導入、覚醒による交感神経活動の変化に伴う手掌発汗は、より変化が大きいと推定される。この測定をpositive controlとして、自作機器および前記の2種類の市販計測器を用いて予備的臨床研究として実施し、使用機器の信頼性を確認する。
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Causes of Carryover |
研究協力者への謝金について、事務手続きの遅れにより2022年度は支出できなかった。また、試作測定機器の作成費について、1号機作成については支出した。その後も改良、改造を継続して行っていたが、その費用の支出はある程度まとまってから支出することにしたため未計上となっている。
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