2022 Fiscal Year Research-status Report
レミマゾラム投与によるマウスのせん妄表現調査と時計遺伝子Per2の検証
Project/Area Number |
22K09044
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
青木 善孝 浜松医科大学, 医学部附属病院, 診療助教 (00436924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 洋 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (10397408)
栗田 忠代士 浜松医科大学, 医学部附属病院, 准教授 (80303569)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | レミマゾラム / せん妄 / Period 2 / ベンゾジアゼピン |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年の本邦での臨床使用が認可された長短時間作用型ベンゾジアゼピンであるレミマゾラムは従来のベンゾジアゼピン系鎮静薬よりも作用時間が短く、代謝産物にも薬理活性がないことから、麻酔後や集中治療室における鎮静時のせん妄発症を予防する可能性が期待されている。ベンゾジアゼピン系鎮静薬は血圧低下などの循環抑制が少ないため、従来は集中治療を要するような血行動態が不安定な患者に使用されてきたが、せん妄の発症リスクを増加させることが報告されて以降、使用を制限されるようになった。本研究はレミマゾラム投与によるせん妄の発症の有無を概日リズム中枢である視交叉上核(SCN)における時計遺伝子Per2に対する作用を含めて調査するものである。 2021年度はまず、C57BL/6マウスに対して、レミマゾラムによる長時間の安定した麻酔を維持する方法を模索した。マウスは血液中にレミマゾラムの代謝酵素を有するため、ヒトでの使用量よりも多量の薬剤を要する。安定した実験結果を得るために多くの専用シリンジポンプを作成する必要が生じた結果、最大10台を同時に使用して麻酔が可能となった。これによりまずは、行動リズムに対するレミマゾラム麻酔後の位相変位量を計測したところ、生食を用いたコントロール群と同様にレミマゾラム麻酔後には位相変位は認めなかった。これはレミマゾラムによるせん妄予防効果を支持する結果であったため、今年度は行動実験による麻酔後のせん妄様行動を評価し、視交叉上核のPer2遺伝子の発現に与える作用も調べるよう計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は主にレミマゾラムによるマウスの複数頭同時並行の安定した麻酔方法の確立に時間を要した。また、今後の研究計画で視交叉上核の時計遺伝子Per2の発現変化を評価することを予定していることから、まずは行動的にマウスの概日リズムに対する作用を評価することが必要と考えたため、これを先行して実験を行った。そのため、当初の予定であった麻酔後のせん妄様表現の比較評価は2023年度に実施することとなり、研究課題の遂行状況としてはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
レミマゾラムとミダゾラムの体内での代謝速度の違いから、鎮静時間を合わせて投与量を調節する必要があるため、レミマゾラムの鎮静時間に合わせたミダゾラムの投与量をまず設定し直す必要が生じた。それを明らかにしたうえで、各麻酔後24時間と72時間後のマウスの認知機能、精神運動障害、記憶障害を行動実験的に比較実する。 視交叉上核における時計遺伝子Per2の発現変化に関しては、薬物濃度による作用の変動も比較可能な方法がより適切であるため、Period2遺伝子にLuciferase遺伝子を連座させたマウスを使用して生脳スライスを使用した方法に変更して実施する。機器に関しては浜松医科大学共用実験機器のものを使用する。 Per2エンハンサーであるノビレチンを使用したせん妄表現の抑制効果に関しては、レミマゾラムによるせん妄表現が誘発されるか否かによって実施の方向性を判断する。仮にレミマゾラムがミダゾラムと異なり、麻酔後のせん妄表現を生じない場合には、せん妄の原因の一つと考えられている脳内炎症に与える作用を両者で比較検討することによりメカニズムの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
研究がやや遅れた結果、助成金の使用も計画より遅れているが、今後遺伝子検査などが予定されているため全体としては問題なく使用できている。
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Research Products
(4 results)