2022 Fiscal Year Research-status Report
凝固と抗凝固の不均衡が及ぼすトロンビン生成とフィブリン構造、機能-病的血栓の解明
Project/Area Number |
22K09055
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
市川 順子 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (60318144)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 新鮮凍結血漿 / クリオプレシピテート / 凝固因子 / 抗凝固因子 / 血栓形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、病的血栓形成の機序を解明することにあり、術後血栓のひとつの要因として、周術期に用いる血液製剤投与がある。日本において凝固因子補充目的で用いられる血液製剤は新鮮凍結血漿(FFP)とクリオプレシピテート(Cryo)がある。CryoはFFPよりも高濃度のフィブリノゲンを含み止血改善効果が高いが、その作成に大型の冷却遠心機が必要になる。そこで、人工心肺中にFFPを投与し限外濾過により濃縮した場合を想定し、in vitroで透析膜を用いてFFPを限外濾過(UF)後に生成した濃縮物を凝固因子活性などにつきCryo製剤と比較検討した。 37℃で融解したFFPを500mlの生理食塩水で洗浄後の透析膜内に流入させ、ポンプによって流量300ml/minで送液を行い、検体量を含めて廃液360mlを排出させ濃縮させた。FFPとUF後の濃縮物及びCryoの各種蛋白、各凝固因子、抗凝固因子、血液凝固機能などを測定し、各因子を比較検討した。 UF濃縮液はCryoと比較して、フィブリノゲン濃度、FⅧ活性、vWF活性、浸透圧は有意に低いものの、FⅤ、FⅨ活性、アンチトロンビン濃度、総蛋白、アルブミン、比重が有意に高かった。ROTEMではCryoの最大血餅硬度がUF濃縮液と比較して有意に高く、フィブリノゲン濃度上昇を反映していると考えた。本研究における透析膜の分画分子量10kDa程度であり、理論上、分子量10~50KDa程度以上の成分を濃縮回収できる。しかし、UFにおけるフィブリノゲンの回収率は34.8%と低く、これは全濾過による目詰まりや濃度分極が進行した結果、膜の分離性能の低下が原因と考えた。一方、蛋白やアルブミン濃度は高く膠質浸透圧維持に有効であり、アンチトロンビン活性も高いゆえ抗血栓性にも優れていると考えた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究を終え、データ収集、解析、論文執筆まで進め、投稿準備段階である。それと併存して、次の研究(今後の研究の推進方策を参照)の予備研究を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
術後に低分子ヘパリンによる血栓予防療法が必要になる症例における周術期の血液凝固機能を評価し、術後の低分子ヘパリンが血液凝固機能に与える影響、効果を調べたい。この研究により、手術侵襲が血液凝固機能に及ぼす変化、そして低分子ヘパリンの抗凝固作用の効果、患者素因による違いが明らかになる。 術後に低分子ヘパリンを皮下注射する患者100人を対象として、術中に血液製剤を投与した患者も含む。静脈血1回25ccを入室時、退室時、術後1日目、2日目、3日目の計4回行う。なお、手術中の採血は観血的動脈圧ラインより行う。術後の採血は臨床用の朝の採血時に同時に行う。以下の項目を測定する。血算(ヘモグロビン濃度、血小板数)、PT、APTT、フィブリノゲン濃度、CRP、Anti-Ⅹa活性(低分子ヘパリン濃度)、TAT、F1+2、AT、Dダイマー、PIC、第Ⅷ因子、ClotProによる血餅硬度、トロンビン生成能
|
Causes of Carryover |
論文投稿するに際して当初の計画に計上していなかった投稿料を要した。今後は今年度の研究を進めるのに際して必要な経費の計上を優先させ、症例数を集めることに専念したい。
|