2022 Fiscal Year Research-status Report
内因性オピオイドネットワークに着目した蘇生後脳症の病態形成機序解明
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22K09061
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Research Institution | Akita Cerebrospinal and Cardiovascular Center |
Principal Investigator |
佐々木 一益 秋田県立循環器・脳脊髄センター(研究所), その他部局等, 主任研究員 (80738948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 和紀 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (10344350)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 蘇生後脳症 / 内因性オピオイドネットワーク / 脳保護 / 脳蘇生 / 虚血再灌流障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
心肺停止蘇生後脳症の効果的な治療法は未だ確立されていない。先行研究では、オピオイド系の脳や脊髄における虚血再灌流障害に対する作用について相反する議論展開がなされており、未だその結論が得られていない。 本研究の意義は、これまでに非臨床研究の場にて実施されて来た全脳虚血後の虚血再灌流障害に対する抗炎症薬や抗酸化薬などを用いた薬物療法の有効性評価とは異なり、生体に備わる生理機能に着眼する点にある。即ち、生体内で多面的な生理学的役割を担う内因性オピオイド・ネットワークが蘇生後脳症の有効な治療法開発につながる標的分子であるか否かを明らかにする事を目標としている。 今年度は、内因性オピオイド・ネットワークを構成するオピオイド系(μ、κ、δオピオイド系など)の中でもμオピオイド系をターゲットに実験に着手した。具体的に、8-12週齢のμオピオイド受容体遺伝子欠損マウス(野生型、ホモ型)とC57BL/6JJclマウスを用いて、カリウム製剤投与による8分間の心肺停止蘇生モデルを作製し蘇生率(エピネフリンの投与量、自己心拍再開までの時間、自発呼吸発現までの時間など)、生存率(蘇生後72時間まで)、蘇生前後の生理学的パラメーター(血圧、心拍数、体温、呼吸数など)、そして神経行動異常に関するデータ収集に取り組んだ。また、病理組織学的所見を得る目的から72時間生存した個体の脳組織を採材した。現在、得られたデータの解析段階である。 本研究課題の一翼を構成する今年度の取り組みは、μオピオイド受容体作動薬・拮抗薬のみを用いた検証では成し得ない知見を得るために不可欠なアプローチである。即ち、μオピオイド系が蘇生後脳症の治療標的分子であるか否かを明らかにするために重要な実験に着手したと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現段階において、μオピオイド系が蘇生後脳症の治療標的分子であるか否かについて結論を下すに足る実験データの解析結果は得られていない。しかし、今年度の実施予定であった実験内容のおよそ8割程度を遂行する事ができた。従って、現在までの研究進捗ははおおむね順調であると考えられる。また、実験に供試するμオピオイド受容体遺伝子欠損マウスの繁殖も順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、本研究計画立案時に設定した予定に従い、1)今年度得られたデータの解析、2)採材した脳組織の病理組織学的検索を行う。さて、今年度の実験を遂行する過程で、本研究計画立案時には想定していなかった知見も得られつつある。具体的に、心肺蘇生時における野生型マウスとホモ型マウス間における生理学的反応に違い(自己心拍再開に要するエピネフリンの投与量、自己心拍再開までの時間、自発呼吸発現までの時間、蘇生率など)が生じている可能性がある。先行研究において、オピオイド系が心筋保護作用を有する可能性が示唆されている。従って、次年度以降は脳だけではなく心臓をターゲットに含めたデータ収集を行う事も検討段階である。
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Causes of Carryover |
病理組織解析を実施するために見込んでいた関連機器や試薬の使用において、申請者の所属機関がそれらの一部を所有していた事や他の研究機関から一部の機器の譲渡があったため、経費削減に結び付いた。削減した分の費用は、次年度以降の研究財源(例:学会発表、英文校正、論文投稿費用等)として活用する予定である。
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