2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K09081
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
里元 麻衣子 東邦大学, 医学部, 准教授 (10611551)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | せん妄 / 治療 / 予測 / 神経ステロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
世界の先進諸国が高齢化社会を迎え、健康な長寿社会の実現を目指している一方、外科手術や入院臥床を契機に高齢者のせん妄が高頻度で起きている。高齢者の認知機能低下にはせん妄が大きくかかわっており、せん妄と呼ばれる混乱した状態は、治療に非協力的かつ攻撃的な言動と結びついて、患者自身の生命をも脅かすほか、ひとたびせん妄を生じた患者は無事に退院した後も活動性の低下、認知機能低下、死亡率の上昇など予後不良の転帰を辿ることが近年の疫学調査で明らかとなってきた。 せん妄に対する治療薬として著明な有効性が確立されているものは少ない。せん妄は術後患者の20-50%に起こるといわれ、かつ画期的な治療薬もないまま、環境改善や対症療法を行っている現状である。 本年度、研究代表者は術前の心拍揺らぎから術後せん妄予測ができることを明らかにし、その検討を国際医学雑誌に投稿し受理された。国内では術後せん妄のメカニズムや展望について日本麻酔科学会の高齢者の術後神経障害というsymposiumで発表をし国内外において評価を得てきた。 画期的なせん妄治療薬の開発は現時点でまだ検討事項であるが、せん妄になりやすい患者を手術前にセレクションすることが生理学的指標を用いた解析により可能になっている。この発見と従来言われているせん妄の準備因子(年齢や認知量の程度など)から、限りある医療資源をどこに重点的に配備するかについてとても示唆に富んだ重要な研究ができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに進行している
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Strategy for Future Research Activity |
今後について、これまで同様術後せん妄について、国内外から広く情報収集し、研究協力者と連絡を取り合いながら、術後せん妄を治療できる画期的な治療薬の検討を進める。 近年、高齢者における概日リズム障害がせん妄にかかわることからヒントを得て、一つは体温リズムや概日リズム障害の程度を治療者が理解しやすい指標を定められるか否かの検討を行うことである。生体モニターや生理活性物質など数値により程度が示されればより治療者は介入しやすい。もう一つはメラトニンの分泌に着目した光療法の試みについて検討を行うことである。文献でも効果があるものないものに分かれており、より深い検討を行ったのち、計画を実行に移したいと考えている。
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Causes of Carryover |
物品購入品額が残高を超えていたため、次年度支払いとなり未使用額が生じた。2023年度は、計画通りELISAキット・抗体等の試薬購入費、および国内学会参加を予定しているための旅費に充当したいと考えている。
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