2022 Fiscal Year Research-status Report
疾患分化細胞の複合的解析による"疼痛を伴う注意欠如・多動症"の分子病態解明
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22K09082
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
葛巻 直子 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (10507669)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ADHD / iPS 細胞 / 疼痛 / 知覚神経 / ドパミン神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
注意欠如・多動症 (ADHD) は、年齢あるいは発達に不相応に、不注意・多動性・衝動性などを主徴とする病態であるが、慢性的な痛みを付随症状とする症例も多く、こうした状態における脳内神経機能変容は未解明であり、既存の治療法では十分に改善が見られない場合も多い。一方、疾患患者由来 iPS 細胞は、患者細胞特異的に症状発症メカニズムの網羅的な解析が行える有用なツールであり、これまでにパーキンソン病患者や線維筋痛症患者由来iPS 細胞を解析することで、これらの疾患の病態像を解明してきた。本研究では、痛みを伴ったADHD患者由来iPS 細胞から精神機能調節を司る 脳内dopamine 神経、 GABA 神経、あるいは知覚神経へとそれぞれ分化誘導を行い、各神経サブタイプにおける機能変容を解析することを目的としている。本研究は、九州大学医学部 (2022-120) ならびに星薬科大学 (2022-23) の倫理審査委員会において承認を得て研究を行なっている。初年度 (2022年度) においては、痛みを伴わないADHD 患者、痛みを伴った ADHD 患者ならびに対照者の末梢血単核球より、エピソーマルベクターを用いて初期化因子(OCT3/4、SOX2、KLF4、L-MYC、LIN28 、p53-shRNA) を導入し、iPS 細胞の樹立を行った。また、樹立した iPS 細胞より、小分子化合物を組み合わせることにより、神経堤細胞を経由し、知覚神経への分化誘導を行った。現在は iPS 細胞から、dopamine 神経細胞への分化誘導を行っている。今後は、ADHD ならびにADHD に伴う痛覚過敏に関連する因子を、脳神経系細胞あるいは末梢知覚神経細胞を用いて、網羅的に探索していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ADHD患者あるいは痛みを伴う ADHD 患者由来 iPS 細胞の樹立から開始し、現在は、知覚神経細胞やdopamine 神経細胞などの目的細胞への分化誘導を行なっている段階である。これまでの研究実績を活かし、今年度中に、疾患関連因子の探索は完了する見込みであり、研究課題は概ね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
痛みを伴わないADHD 患者、痛みを伴った ADHD 患者ならびに健常者 iPS 細胞由来分化誘導細胞を用いて、疾患関連因子の抽出を行うとともに、神経細胞の機能変容 (LDH 遊離、ATP 遊離、DA 遊離等) について検討を行う。また、ADHDの発症に関わる pathway を絞り込むために、解析結果を基にゲノム編集技術を応用し、gain of function/loss of function を実行する。得られた結果を統合的な pathway 解析や GO 解析をすることで、ADHD の主症状や痛覚過敏の発現に関連する候補因子を絞り込む。
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