2023 Fiscal Year Research-status Report
The structural and functional change after the treatment with anti-depressant in atypical odontalgia
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22K09087
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
荻野 祐一 香川大学, 医学部, 教授 (20420094)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脳 / 可塑性 / 適応性 / 慢性痛 / 特発性 / 歯痛 / 痛覚変調性疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで申請者を中心に脳画像解析研究を実施してきたチームを継続し、倫理性の担保と被験者の安全性確保のために、臨床試験審査委員会 (倫理委員会) の審査を通過後、UMIN登録 (UMIN000047476) と臨床研究賠償責任保険加入 (証券番号: NF07921991) により、データを集積し解析を実施し、日本ペインクリニック学会第57回学術集会 一般演題(優秀演題)3 [研究2]2023年7月14日(金)10:20~11:20 SAGAアリーナ【E3-4】特発性歯痛における第一次体性感覚野(口腔顔面領域)の萎縮、として学会発表を行った。内容は、痛覚変調性疼痛の代表的疾患である特発性口腔顔面痛患者24名と、年齢性別をマッチングさせた健康被験者25名の脳解剖画像と脳機能画像を解析した。その結果、第一次体性感覚野(S1)の口腔顔面領域に相当する部位の体積縮小を患者群で示した。さらに、そのS1の体積減少は心理的アンケートであるHADS (Hospital anxiety and depression score)(臨床で用いる不安とうつスコア)とPCS (Pain catastrophizing score)(痛みのこだわりスコア)の2つのスコアと負の相関を示した。つまり、痛覚変調性疼痛の特徴とも言える心理的側面の悪化とS1の体積変化が関係あることが分かった。この結果を現在論文として公表すべく執筆中である。残念ながら縦断的な結果(治療後と治療前)の時間的変化は見られなかったのだが、この結果については、健康被験者群においてのみ1度しか脳MRI画像を取得せず、健康被験者の時間効果(時間経過の変化、老化効果)を考慮しなかった研究方法に問題があると考えた。従って、この欠点を補うべく、新たに「前研究「口腔顔面領域における非定型痛みの脳画 像解析による縦断的観察研究」(2017年7月1日-2 021年7月31日)における、健康被験者の追加研究」(UMIN000047476)として公開しデータ取得を終了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健康被験者群においてのみ一度しか脳MRI画像を取得せず、健康被験者の時間効果(時間経過の変化、老化効果)を考慮しなかった研究方法に問題があると考えた。従って、この欠点を補うべく、新たに「前研究「口腔顔面領域における非定型痛みの脳画 像解析による縦断的観察研究」(2017年7月1日-2021年7月31日)における、健康被験者の追加研究」(UMIN000047476)として公開し、データ取得を終了した。このデータを解析する段階にあるが、これまでの結果を元に様々な機会で講演を実施した。2023年6月1日(木) 学術委員会 シンポジウムTS01 学会賞記念講演(山村記念賞受賞講演)脳画像解析を用いた神経plasticity研究、日本麻酔科学会 第70回学術集会(2023年6月2日(金) 13:30-14:30 第3会場 神戸ポートピアホテル南館)招請講演 痛みの心理学、(招待講演)配信会場:東京先進整形外科)講演日時:令和5年8月11日(金) 「痛みの心理学:痛覚変調性疼痛と針刺し禁忌症例について」、先進運動器エコーフォーラム2023「超音波診療の最終ステージ:痛覚変調性疼痛に挑む」Web配信(配信会場:東京先進整形外科)2023年9月3日(日)「脳科学が明らかにした臨床医学のウソと本当」等の講演を実施し2021年に出来たばかりの「痛覚変調性疼痛」という概念の普及に努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
特発性歯痛の病態は、末梢性の要因より中枢性の機序が大きいとされ、実際、三環系抗うつ薬が奏効することも、その機序が中枢性である説を裏付けている。特発性歯痛は、非定型顔面痛、口腔灼熱症候群とも共通する特徴が多いことから、障害程度と部位が違うだけで、同じ神経可塑性疼痛スペクトラム上にあるのではないかと提唱される。静岡市立清水病院のMRI脳画像data取得においては、1.5 Tesla MRI scanner (endeavor, Phillips) を用いて、放射線技術科の理解と協力を得ながら撮影を行ない、UMIN登録 (UMIN000047476) (UMIN000047476)を終了し、データの集積を終えた。本研究において我々は、仮説「抗うつ薬による治療前後で前頭葉と辺縁系を結ぶ機能的ネットワークが増加する」を検証する。この前頭葉と辺縁系を結ぶ機能的ネットワーク増加が、人間の感情処理において抑制的制御を表象しているとされていて (Dichter et al. 2016)、仮説が正ならば「“痛みを過剰かつ過敏に認知するようになってしまった病態”が、治療により抑制的制御されていること」を示唆できる。本研究においては、各種のアンケート (VAS、PCS [Pain Catastrophizing Scale]: 痛みの破局化思考スケール、HAD尺度 [うつスケール]など) を被験者から取得するので、特発性歯痛患者の治療前後における主観的スケールと脳画像との相関解析を施行し、特発性歯痛患者の実際の症状と脳画像 (客観的所見) との相関関係までを明らかにして、特発性歯痛治療における客観的確証とすることを目標としているので、(UMIN000047476) (UMIN000047476)のデータ解析ではこれらの相関解析を推進していく方策である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の異動があったため、研究費の移管と研究環境の移管に手間取ってしまい、物品及び人件費の費消計画に差異が生じてしまった。しかしながら異動は完了し、環境も整ってきたので、時期使用額に問題なく、計画を進捗できる。
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Research Products
(4 results)