2023 Fiscal Year Research-status Report
Examination of anesthetics that are advantageous for tumor immunity targeting cancer specific antigens, cancer specific antigens
Project/Area Number |
22K09108
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
鬼塚 信 九州保健福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (20264393)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Th細胞パラダイム / 免疫チェックポイント / 腫瘍免疫 / 移植免疫 / 免疫寛容 / 免疫記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌免疫療法が注目される中、腫瘍免疫に有利な麻酔法の開発が必要である。樹状細胞等の抗原提示により、Th細胞の比率が変化(Th細胞パラダイム)し、Th1優位であれば抗腫瘍性へ、Th2或は、Treg優位であれば腫瘍免疫抑制へ移行する。しかし、Th細胞パラダイムを介した腫瘍免疫に及ぼす麻酔薬の影響は、不明である。そこで、ヒト白血球を用いて、抗原提示分子、サイトカイン、Th細胞マーカーの発現に及ぼす麻酔薬の影響を検証した。 方法: ヒト正常白血球細胞を検体とした。各麻酔薬に48時間暴露後、QT-PCR法、ウェスタンブロット法、免疫蛍光染色法で解析した。 結果:Th1反応の誘導因子であるIFN-gは、α刺激薬(DEX)、プロポフォール、COX-2選択的阻害剤で増加した。麻薬では減少した。Th1反応の指標であるT-betは、DEX、アドレナリンで増加した。Treg反応の誘導因子であるTGF-βは、モルヒネで増加、α遮断薬(アチパメ)で減少した。Treg反応の指標であるFOXP3は、アチパメで減少した。メモリーT細胞の指標であるCCR7は、DEX、麻薬で増加し、アチパメで減少した。 考察:DEX、プロポフォール、COX-2選択的阻害剤はTh1反応を促進することで、腫瘍免疫を増強し得るが、移植においては拒絶反応を増強し得る。さらに、DEXなどの交感神経α刺激薬は、免疫寛容の誘導を抑制し得るので、腫瘍免疫には有利である一方で、移植における拒絶反応を助長しうる。一方、麻薬は、免疫寛容や、免疫記憶を促進することで、長期的には腫瘍免疫には不利となる可能性がある。これら反応は、交感神経α遮断薬で拮抗される可能性がある。結論:腫瘍免疫には交感神経α刺激薬は適している。一方、麻薬は、免疫寛容を誘導し移植免疫には適しているが、腫瘍免疫を抑制し得る。癌治療、移植におけるそれぞれの長所を利用することが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題、免疫チェックポイント分子、癌特異抗原を標的とした腫瘍免疫に有利な麻酔薬の検討において、免疫を増強し、腫瘍免疫を増強する麻酔薬や、免疫寛容を介して抑制しうる麻酔薬、さらに、これらの免疫増強や寛容を記憶する免疫に作用する麻酔薬を同定し得たという点では、本研究は、概ね順調に進展していると考える。これらの研究結果は日本麻酔科学会(2022年、神戸市)にて抗原提示細胞とTh細胞パラダイムを介した腫瘍免疫に及ぼす麻酔薬の影響という課題名で研究代表者が発表し、さらに、日本麻酔科学会(2024年、神戸市)にて、麻酔薬の腫瘍免疫および移植免疫におけるTh細胞パラダイムを介した免疫増強、免疫寛容、免疫記憶に及ぼす影響という課題名で研究代表者が発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
樹状細胞等の抗原提示により、Th細胞の比率が変化(Th細胞パラダイム)し、Th1優位であれば抗腫瘍性へ、Th2或は、Treg優位であれば腫瘍免疫抑制へ移行し得る。これらのTh細胞パラダイムが麻酔薬によって変化しうることを検証した。 今後の研究で、これらの麻酔薬の免疫チェックポイント分子を介して免疫を変調させる機序の解明が必要であると考える。 免疫チェックポイント分子を宿主あるいは腫瘍、移植細胞に強制発現させその後の免疫応答を解析しすることで、麻酔薬および免疫チェックポイント分子の腫瘍免疫、移植免疫に及ぼす影響及び機序を解明したい。 麻酔薬の免疫チェックポイント分子を介しての免疫変調機序を解明、応用することで、新たながん治療あるいは臓器移植における免疫療法を確立したい。
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Causes of Carryover |
消耗院の価格の変動により、次年度使用額が生じた。 次年度、消耗品購入に充てる予定である。
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