2023 Fiscal Year Research-status Report
敗血症とその後の集中治療後症候群におけるミトコンドリアタンパクの役割
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22K09141
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
菊谷 知也 広島大学, 病院(医), 助教 (10811341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相澤 秀紀 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (80391837)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 敗血症 / 集中治療後症候群 / トランスロケータープロテイン / ステロイド / プロゲステロン |
Outline of Annual Research Achievements |
1)TSPOKOマウスは野生型マウスに比べて盲腸結紮穿刺(CLP)による敗血症急性期にプロゲステロンが低値であるという前年度までの結果から、TSPOKOマウスで認められた敗血症後遺症の影響にプロゲステロンの不足が影響している可能性を考慮し、プロゲステロンの補充実験を行った。TSPOKOマウスをランダムにプロゲステロン投与群(N=15)とVehicle投与群(N=15)の2群に分けて、CLP施行後にプロゲステロン(8mg/kg)もしくはVehicle投与を5日間行った。プロゲステロン投与群で生存率、体重減少はやや良好な結果であったものの有意差は認めず、慢性期の行動実験(高架式十字迷路、尾懸垂試験、Y迷路、オープンフィールド試験)でも両群に有意差は認めなかった。プロゲステロンの量や投与タイミングなどの影響も考えられるが、TSPOKOによる敗血症予後悪化の影響はプロゲステロンの不足によるものだけではないことが示唆された。 2)敗血症とTSPOの関連を調べるため、実際の敗血用患者と健常コントロールの血漿を用いてELISA法で血漿中のTSPOを測定した。その結果、敗血症患者では血漿中TSPOが健常コントロールに比べて有意に低いことが示された。ROC解析の結果、敗血症診断におけるTSPO値のAUCは0.8以上であり、血漿TSPOが敗血症診断に有用である可能性が示唆された。この機序の解明の過程で、ミトコンドリア機能障害の指標とされるgrowth differentiation factor 15 (GDF-15)に着目し、ELISA法で敗血症患者の血漿GDF-15を測定した。敗血症の合併症である敗血症性心筋症を合併した患者では血漿GDF-15が有意に上昇しており、敗血症性心筋症のバイオマーカーになりうることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TSPOKOマウスに対するステロイド(プロゲステロン)補充実験は予定通り行えた。ただし、今回の条件下では、敗血症の生存率や後遺症の改善は認められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
TSPOはコレステロール輸送に関与することから、TSPOが敗血症の経過や後遺症に与える影響とその機序について、ステロイドのみならず脂質に注目した解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
TSPOKOマウスへのプロゲステロン投与を行ったが、8mg/kgの量の5日間投与では、敗血症の経過や後遺症に明らかな差が認められなかったため、それ以降の追加の実験(リアルタイムPCRによる組織中のサイトカイン測定)などを行わなかったため。 ヒトの敗血症血液検体を収集できているため、今後はTSPOと敗血症の関連について、ヒトの血液検体を用いた解析もさらに進めていく予定である。
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