2022 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス性敗血症を中心とした水素のNETs抑制効果検討
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22K09175
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
小濱 圭祐 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (50595171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 倫子 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (40566121)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水素 / NETs / ウイルス性肺炎 / 敗血症 / COVID-19 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、水素が敗血症病態、とくにウイルス性の敗血症病態における好中球細胞外トラップ(NETs)形成を抑制し得るか、また抑制する場合には、水素吸入がin vivoにおける敗血症性臓器障害を緩和できるか、を明らかにすることである。 本研究で明らかにすることは以下の2点であり、2022年度には①についての検討を行うことを計画していた。①in vitro実験系において、ヒト好中球への水素投与はウイルス性刺激誘発のNETsを抑制することが出来るか。②in vivo実験系において、げっ歯類への水素吸入投与はウイルス性敗血症モデルによる臓器障害を緩和することが出来るか、またその緩和はNETs抑制によるものであるか。 2022年度の計画はヒト好中球を用い、in vitroの系で培養大気中の水素濃度によるNETs産生量を確認することであった。培養シャーレを専用チャンバー内に入れ、チャンバー内に1.3%水素混合空気を充填することで吸入水素を模擬した状態を作製することを試みたが、1.3%に調節した混合ガスを用いても培養時間(3時間程度)中に1.3%を維持することが難しいことが明らかとなった。そのため、水素濃度、二酸化炭素濃度、湿度、温度を測定するセンサーを組み合わせ、通常の培養条件(37℃、5%CO2、湿潤環境)下において任意の水素濃度を設定し、自動制御で培養時間内に減少した水素を追加して設定濃度を維持する、本研究専用の小型培養機構を独自に開発した。この装置の開発により、市販の混合ガスでは1.3%の上限があったが、既報などにあるような3%水素濃度の作成が可能となり、より効果的な水素の条件を追及できる環境が整った。 同時に、感染性の無いSARS-CoV-2のリコンビナントs蛋白を用いてNETs誘導の条件を検討しており、現在濃度条件の確認中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、2022年度中にTLRリガンドモデル、COVID-19モデルのin vitro培養モデルを作成し、NETs形成について水素が及ぼす効果を確認する予定であったが、実際には培養実験条件の安定化のために独自の測定、培養機構を開発する必要に迫られ、水素がウイルス誘導性のNETsに及ぼす効果をin vitroで確認するまでには至らなかった。しかし、2022年度に作成した独自の培養機構によって、実験条件の最適化が当初の予想をはるかに超える精度で可能となった。 従って、研究全体の進捗としては当初の想定より「やや遅れている」としたが、2022年度の試みは本研究を遂行する上で必要不可欠な開発であり、今後の研究精度の向上に大きく寄与する内容となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
培養環境については最適化ができたため、今後はウイルス性肺炎モデルをin vitroで作成し、水素の効果を確認していく。当初の1.3%以外に、既報などで用いられ効果が報告されている3%濃度の水素についても検討可能となったことから、当初の予定に追加して3%濃度の水素についても検討を行う。効果が認められれば機序の検討と、動物を用いたウイルス性肺炎モデルの作成を行い、最も効果的と考えられる水素濃度での吸入実験を検討していく。
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Causes of Carryover |
2022年度に中心となった専用の培養機構開発については、外部の専門家を交えた検討であったが、装置の完成は2023年度の春となったため、開発に係る諸費用などの計上が終了していないことが一因である。 また、培養実験自体がまだ開始されたばかりであり、必要な試薬類がまだ購入されていないことも次年度使用額が生じた理由である。 従って、使用計画としては、培養機構に係る費用を支出し、培養実験に必要な試薬類を購入する。
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