2022 Fiscal Year Research-status Report
人工酸素運搬体を用いたmulti-targetの脳保護療法の開発
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22K09224
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鐙谷 武雄 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (80270726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 幹 北海道大学, 医学研究院, 教授 (00361098)
伊東 雅基 北海道大学, 大学病院, 助教 (10399850)
小松 晃之 中央大学, 理工学部, 教授 (30298187)
川堀 真人 北海道大学, 医学研究院, 助教 (50399870)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 人工酸素運搬体 / 虚血再灌流傷害 / 脳梗塞 / 抗酸化物質 / 脳保護作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では抗酸化作用を付加したヘモグロビン人工酸素運搬体(HBOC)にさらにCOを結合させ、この製剤を用いてmulti-targetの脳保護効果を検討することを目的としている。 当初の申請書の作成の段階では、HBOCとしてヘモグロビン(Hb)にヒト血清アルブミン(HSA)が3分子結合したHb-HSA3(HemoAct)を用いて、これに抗酸化物質として、白金ナノ粒子、カタラーゼをそれぞれHb-HSA3に付与して、それによる脳保護増強効果を検討する予定であった。しかし、その後、製剤の開発を担当している中央大学より新たなHBOCとして、粒子内に元よりカタラーゼを内在しているヘモグロビンナノ粒子(HbNP)が開発された。HbNPでは作製された時点で既に抗酸化作用を有していることより、合成の手順を少なく出来ることから利便性が高いと考えられ、これも使用する薬剤の候補とすることにした。そしてHbNPの保護能力をまず検討するため、白金ナノ粒子(PtNP)、カタラーゼ(Cat-HSA3)をそれぞれHb-HSA3に付与した製剤PtNP-Hb-HSA3、Hb-HSA3/Cat-HSA3と比較して脳保護効果を比較検討し、最も保護効果があるものをCOとの結合体として今後の実験に使用することとした。 糸栓子 (Doccol社製) を用いたラット脳虚血再灌流モデルを使用し、2時間虚血後の再灌流時に治療薬として、①HbNP、②PtNP-Hb-HSA3、③Hb-HSA3/Cat-HSA3の3製剤をそれぞれ静脈内に投与し、24時間後での神経障害度、梗塞体積、等を評価した。その結果、HbNPが他の2製剤と比較して、最も梗塞体積を縮小させていた。このため、今後、HbNPを使用して本申請研究の実験を進めることに決定し、COを結合させたCO-HbNPを用いて、さらなる脳保護効果が発揮されるかを検討することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、Hb-HSA3(HemoAct)に抗酸化物質として、白金ナノ粒子、もしくはカタラーゼを付与したPtNP-Hb-HSA3、もしくはHb-HSA3/Cat-HSA3で実験を開始する手筈であった。しかし、新たに開発された内在的にカタラーゼの抗酸化作用を有しているHbNPについてCO体とする前のベースの脳保護効果を検討する必要が生じ、上述のように当初の計画にはなかった予備実験として、①HbNP、②PtNP-Hb-HSA3、③Hb-HSA3/Cat-HSA3の3製剤を用いた脳保護効果の比較検討を行い、これに時間を要した。その分、当初の計画よりは遅れている状況である。 ただ、今後に関して述べると、上記の②、③のHb-HSA3に抗酸化物質を付与する製剤よりは手順が少なくなり、また、抗酸化作用についても赤血球内に存在するカタラーゼを製剤作製時にそのままの形でHbNPに取り込んでいるので、安定したカタラーゼの抗酸化作用を期待できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はHbNPにCOを結合させたCO-HbNPを用いて、元のHbNPに比べて、さらなる脳保護効果が発揮されるかを検討することになる。 糸栓子を用いたラット虚血再灌流モデルを使用して脳保護効果を検討する予定である。CBF低下をレーザー血流計で確認し、2時間虚血後の再灌流時に治療薬の静脈内投与を行い、24時間後での神経障害度、梗塞体積、等をまず評価する。 微小循環改善作用の検討として、虚血再灌流後の微小循環障害が生じる再灌流6時間後の脳を採取し、パラフィン切片を用いて微小血管の形態変化(狭小化の有無)を検討する。さらに免疫染色の手法を用いて、自己赤血球(ラットHb抗体使用)およびCO-HbNP(ヒトアルブミン抗体使用)の灌流状態を検討する。 抗酸化・抗炎症・抗アポトーシス作用の検討としては、脳組織抽出蛋白、凍結切片を使って、Western blotting、ELISA、免疫染色の手法を用い、以下のマーカーを使って検討する。抗酸化作用については、DHE、8OHdG、4-HNEを検討し、抗炎症作用については、MPO、MMP-9 、ICAM-1、Iba-1を検討し、抗アポトーシス作用については、TUNEL法によるDNA fragmentation、Bax、Bcl-2を検討する予定である。 therapeutic time windowの検討としては、虚血時間を通常実験の2時間から4時間、5時間、6時間と伸ばして、再灌流開始時に製剤を投与して、どの段階まで脳保護効果があるか、すならち、therapeutic time windowがどこまで伸ばせるのかを検討する。また製剤の投与タイミング(再灌流開始前投与)、投与回数(単回と複数回)で保護効果が異なるかを併せて検討する。
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Causes of Carryover |
コロナによる研究所閉鎖の影響があったため消耗品の使用が予定より少なくなったため、差額が生じた。今後、消耗品の購入に充てる予定である。
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