2023 Fiscal Year Research-status Report
免疫細胞の加齢による腫瘍微小環境の変化とその制御による膠芽腫治療法の開発
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22K09261
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
八幡 俊男 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (40380323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上羽 哲也 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00314203)
東 洋一郎 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 講師 (80380062)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 膠芽腫 / がん幹細胞 / 治療抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
原発性脳腫瘍のうち悪性度の最も高い膠芽腫は、放射線治療や化学療法に対して強い抵抗性を示し、その一因となる腫瘍幹細胞を含んでいる。近年、腫瘍随伴マクロファージ(TAM: tumor-associated macrophage)やミクログリアが、膠芽腫幹細胞にPMT(Proneural-Mesenchymal Transition)と呼ばれる形質の転換を誘導し、治療抵抗性に影響を与えることが報告されている。 本年度は、膠芽腫幹細胞におけるPMTを制御する因子について検討をおこなった。我々は、過去にCD146遺伝子が膠芽腫幹細胞で高発現し、その発現阻害が増殖を抑制することを見出している。CD146の阻害による増殖抑制効果が低い膠芽腫幹細胞株においてsiRNAを用いてCD146遺伝子の発現を抑制すると膠芽腫幹細胞のPMTが阻害された。さらに、ゲノム編集によりCD146遺伝子をノックアウトしても同様に間葉系(Mesenchymal)タイプへの移行が強く阻害された。CD146はProneuralタイプの細胞で高発現し、膠芽腫幹細胞株によっては、Proneuralタイプから間葉系タイプに移行後、細胞集団の中で発現頻度が低下することが観察されるために間葉系タイプの状態の維持ではなく移行するためのスイッチの役割を果たしていると考えられた。 膠芽腫幹細胞におけるCD146遺伝子の情報伝達経路を同定するためにCD146ノックアウト細胞を用いてRNA sequencingをおこない、PMTの制御に関わる候補となる遺伝子群や経路を同定した。これらの結果は、膠芽腫幹細胞におけるCD146の多機能性と治療標的分子としての有用性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
老齢マウスの入手が困難である場合、早期に自己飼育により老齢マウスを準備することも考慮している。また、臨床サンプルを用いた解析を積極的に進めることも必要であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
膠芽腫細胞が治療に抵抗性を示す一因であるPMTを制御する遺伝子としてCD146を同定ているので、CD146の情報伝達経路上においてミクログリアやTAMを含む腫瘍微小環境と老化に関連する因子を探索する。また、老化マウスの入手後は、初年度に樹立したレポーター遺伝子を導入したマウス膠芽腫幹細胞株GL261TSの移植実験により、老化個体特有の腫瘍微小環境と膠芽腫細胞の相関関係について探索をおこなう。さらに膠芽腫患者由来の幹細胞株についても免疫不全マウスへ移植し、老化時に特徴的な炎症を薬剤投与により抑制することで腫瘍の増殖や形質に及ぼす影響について検討する。
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Causes of Carryover |
消耗品の入手が一部困難であったために残予算が生じた。残額は次年度に試薬消耗品費として使用する。
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Research Products
(3 results)