2022 Fiscal Year Research-status Report
脳脊髄液漏出症の高精度・非侵襲的な新規診断法開発のためMRI・蛋白解析研究
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22K09267
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
伊藤 敬孝 順天堂大学, 医学部, 助教 (90365578)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 晋也 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (10220378)
萬代 秀樹 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10265994)
秋葉 ちひろ 順天堂大学, 医学部, 助教 (40837754)
中島 円 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50317450)
宮嶋 雅一 順天堂大学, 医学部, 教授 (60200177)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脳脊髄液漏出症 / MRI / Time-SLIP |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の検査法で診断された脳脊髄液漏出症において脊髄の髄液動態はTime-SLIP法でどのように描出されるか、従来の検査法では確定診断できない脳脊髄液漏出症疑い症例において脊髄の髄液動態はTime-SLIP法でどのように描出されるか、健常対照群における脊髄の髄液動態はTime-SLIP法でどのように描出されるか、の3点をMRIを用いた解析目標と設定した。また、脳脊髄液漏出症患者の治療前後で血液中濃度が変化する蛋白は何か、その血液中蛋白濃度は健常者と脳脊髄液漏出症患者で差異があるかの2点を血液中蛋白濃度測定による解析目標として設定した。 今年度はまず、MRI撮像条件の構築から研究計画を開始した。生理的にはクモ膜下腔にのみ存在する脳脊髄液が、クモ膜下腔の外側の硬膜下腔やさらに外側の硬膜外腔に分布していることを可視化し髄液漏出を確認することとした。そのために、従来の検査法で同定された漏出部位と、その頭側および尾側の計3か所をパルス範囲と設定し、脊髄矢状断をTime-SLIP法で撮影する手法をとった。観察項目は、1)髄液信号の分布(クモ膜下腔・硬膜下腔・硬膜外腔など)・2)髄液拍動の振幅(回/秒)・3) 髄液拍動の強さ(信号の移動距離)とした。予備実験としてファントム実験を計画したが、今年度はまだ実施できていない。 画像解析の対象者として、従来の検査法で脳脊髄液漏出症と診断された成人10例、従来の検査法で脳脊髄液漏出症と診断され治療を行い改善した成人10例、従来の検査法では確定診断できないが脳脊髄液漏出症が疑われる成人5例、他の疾患の診療において脊髄MRIが必要とされた成人10例(健常対照群)を対象として設定した。しかしながら、今年度は、従来の検査法で脳脊髄液漏出症と診断され治療を行い改善した成人1例および健常対照1例のみの施行にとどまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
原因として、第一に臨床に使用しているMRI機器を用いて撮影することから、臨床業務に影響しない範囲での撮影時間が限定されること、第二に脳脊髄液漏出症の症例が渉猟できなかったことが挙げられる。 データ収集に遅延が生じたため、解析・考察においても遅れがある。脳脊髄液漏出症症例と健常対照症例が1例ずつであるため、得られた画像所見が病態特異的な意義があるか否かを判断できず、関心領域も特定できていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の対象に加え、当院で症例を多く渉猟できる特発性正常圧水頭症患者を解析対象として加えることとする。特発性正常圧水頭症においては、検査としての髄液排出試験により、作為的に一時的な脳脊髄液漏出状態となる。また、治療としてのシャント手術後にも、一時的に脳脊髄液漏出状態となるため、これらの状態における症例を対象として加えることで、より確実に「脳脊髄液漏出状態」にある症例のデータ収集が可能となる。これらの症例において、血液中蛋白濃度測定も行っていく。
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Causes of Carryover |
対象となる症例の渉猟が遅延したため、脳脊髄液漏出症の治療前後で血液中濃度が変化する蛋白のprotein array法による網羅的探索や、protein arrayで抽出した蛋白と、病態関連蛋白の候補としてのTau, β-trace, DKK3,β2-transferrin, Cystatin C等の測定が行えなかった。余剰金を次年度の抗体・試薬等の経費として計上した。
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